「同じ空の下で…」


微笑ましいと言うよりも、瞬の機嫌の良さに私は安堵した。

瞬が笑って過ごせているなら、自然に私も笑う事が出来る。



もう、二度とあんなに寂しさに満ち溢れた瞬の顔など見たく無い。


瞬には、笑顔で居てほしい…────。


せめて、ここ日本に居て私と同じ時を過ごしている間は、いつも笑っていて欲しいと思った。


その間に、私は私で、瞬を笑顔に導く術を身につけようと思う。




その日、頼まれていた事をタケルと2人で分散させ、私の仕事量は少し楽になった。


相変わらず皆と盛り上がって話をして楽しそうな瞬を見て、私は帰り支度を始める。


男同士の盛り上がりに入る隙は、全く無いし、瞬にとってのかけがえのない瞬間(とき)を私は邪魔したくなかったのだ。


軽く瞬の肩をたたき

「今日は帰るね?おつかれさん♪」

そう言って、その場を後にした。


「おい~、帰るの?待ってよ、俺も帰るって!」


「…ううん、今日は皆と楽しんで!じゃあね、また明日っ!」


「…じゃ、後で電話する~!」


私は振り向きもせずに、瞬に軽く手を上げ、事務所を後にした。





何も四六時中、お約束のようにして私と一緒に居てくれなくてもいいのに…なんて強がったフリを帰りの電車の中で思ってみたりする。