店を後にすると、タケルは私に助手席に座る様に言った。
「何で?タケル、前に座りなよ?」
「いい、いい。瞬の隣が艶香の席じゃん?」
「何いって…、…変な気を遣わなくていいのに。」
タケルの気遣いを素直に受け、私は瞬の隣に座る。
「じゃ、俺、こっから歩いて帰るから。今日はどーもな?」
タケルは車に乗り込まず、そのまま歩き出した。
「おいっ!乗れって!」
瞬が、タケルを追う。
「…いいよ、二人の時間、大事にしたらいい。俺、酔い覚ましながら帰るし。大丈夫大丈夫。そんなに遠くないしさっ!じゃな!」
大きな声でタケルはそういうと、その場を後にした。
「・・・・んだよ、あいつ!ま、いいか。」
ブツブツいいながら、瞬は運転席に乗り込んだ。
「…いいの?」
「…本人がああ言ってるんだからいいんじゃね?俺も、タケルの立場なら同じ行動すると思うし。」
瞬は助手席に手をかけると、車をバックさせて、私の家までの路を走り出した。
少し酔い気味だった私は、瞬の空いてる左手を見つけると、ギュっと握った。
無言で私の顔を驚くように見る瞬だけど、同じように私の手を握り返してくれて、そのまま手を絡め合うようにして、手を繋いだ。
相変わらず温かい瞬の手が、私の手をじんわりと温めてくれる。
信号待ちに差し掛かると、瞬は私の顔を覗き込み、軽く唇を合わす。
咄嗟に私も目を瞑り、瞬を無言で見る。
信号が変わると、何食わぬ顔をして瞬はまた運転を続ける。
