「…俺にも?それは困るなぁ。頼める事が頼みずらいじゃん?」
タケルが笑いながら私を見る。
「…じゃあ、どうすればいいの?」
「…ま、艶香は艶香のまんまでいいさ。あくまでも俺の心配性な部分から来る我儘だから、そんなにまともに受け捉えなくていいよ。ごめんな、気分を損ねるような事言って。」
タケルの前だっていうのに、瞬は私の手に自分の手を重ねると、困ったような顔をして謝ってきた。
そういう表情に弱いのを瞬は分かってそういう行動するんだろうか…?
そんな顔で言われたら、何も言えなくなる…。
「…わかった。許す…。」
タケルも柔らかく微笑むと私を見て言う。
「艶香なら大丈夫だ。でも、女故にどんな事が取り巻くかなんて誰にも分からない。自分で対処できないような事があったら遠慮なく連絡してな?」
「…うん、分かった。その時は甘えるから…ね?」
自分が妙に子供みたいな気持ちになってしまう。
瞬とタケルの顔を交互にみると、瞳にキラキラと水流が映りこみ、素直な気持ちになってしまうのが、不思議でならなかった。
この空間は、きっと誰もが素直になれてしまう空間に仕上がっているのかもしれない。
ふと、瞬が私の手から手を離す。
すると、私の指の瞬から貰った指輪が、照明に照らされてキラキラと輝きを増した気がした。
