「艶香ちゃんの事は瞬から聞いています。ゆっくりしていってね。」
にっこりほほ笑むその顔も、瞬の笑顔にそっくりで思わずドキドキしてしまう。
いや、それ以上に、緊張で一杯になってしまった私は、お辞儀をすると、瞬の顔を見た。
瞬はまた片方の口角だけ上げて、私に微笑む。
「…さて。何飲む?何、食う?」
予約されていた席につくと、瞬は私の向かい側に座り、タケルが私の横に座った。
「…オムライス、3個でいい?飲みもんは?」
「私、じゃぁ、ビールで。」
「俺も、ビールで。あ、あとオムライスは大盛りで。」
「だって、姉貴。OK?」
「はい。かしこまりました。瞬は?飲まないの?」
「俺、今日運転手。一番在庫抱えてるジュースとか持ってきて?」
「じゃあ、適当に何か持ってくるね。」
瞬のお姉さんは、厨房に行くと、私たちの注文を浅黒い顔のお兄さんに告げた。
「…あの人は、姉貴の旦那さんね。」
浅黒い顔のお兄さんを指さすと、瞬は私に教えてくれた。
「…ねえ、もしかして、ここ瞬のお父さんの経営してるっていう…レストラン?」
「…まぁね。姉貴の旦那さんが店長してるけど。持ち物としては俺の親父のものだ。」
瞬は、首をグルグルと回し、骨を鳴らしながら、面倒臭そうに私の質問に答えた。
やっぱり、瞬って…そういう家柄の人間なんだ…と、私は少し俯いた。
