車中、タケルと瞬は中学の同級生の話で盛り上がって居た。
なかなか話題に入れずに居た私は、ひたすら車の外を眺めて、ここまでの道を頑張って覚えていた。
パーキングに車を止めると3人で外を歩いた。
「艶香~?着いてきてる?」
「うん、大丈夫。」
時々、瞬が私を気遣ってくれる。
いつも一緒の時は手を繋いだりしてリードしてくれる瞬もさすがにタケルの前では、互いに距離を取って歩いた。
一際目を惹く電飾が施されているカフェに辿り着くと、瞬とタケルはさっさと階段を下りて行った。
目の前に写る光景。
ここに連れて来られたのはつい最近の事だというのに、とても懐かしさを感じた。
一面を飾る水の壁。
瞬と初めて来た時のドキドキした感情と感動を思い出す。
瞬の瞳に映ったキラキラとした流水。
その瞳でジッと私を見ていた瞬の瞳───…。
「艶香?どした?」
タケルに声をかけられて、やっと我に帰る。
「…あ、ごめん。えっと…」
「いらっしゃいませ。あ、もしかして、あなたが、艶香ちゃん?」
我に返った私の眼の前に居たのは、目元が瞬によく似た大人の女性だった。
「紹介するよ、俺の姉貴。」
「わ、わ…あ、あの初めまして。英つやかです…。」
完全に慌ててしまい、私はどぎまぎした。
その様子をクスッと笑うと、瞬のお姉さんは、私をしっかりと見た。
「始めまして。瞬の姉の岡崎 汐織です。」
