そう答えると、さっきまでの2人っきりの空間が脳裏に蘇った。
言葉にできないくらい幸福感に包まれたあの空間…───。
時間が止まって欲しいと密かに願ったあの心地よい…瞬の優しい体温────。
つい体が熱くなってしまう。
「…ここに、証拠を見つけちゃった」
「…え?」
私のうなじを差すと、由美はコスメバッグに道具を丁寧にしまった。
「…あ。」
その時、やっと気が付く。
うっかりしていた。
あの悪戯好きの瞬に、完全に油断をしていた。
完全にノーマーク状態だった自分に落胆した。
いつの間にか私のうなじには瞬に愛された証が残されていたのだった。
それに気が付くと途端に体全体が熱くなり、恥ずかしさで一杯になった。
由美は、相変わらず笑顔で鏡越しに私を見ていた。
「由美…ありがと…。はぁ…。」
洗面台に手をかけると、私はうなだれた。
「…いいんじゃないかな~?瞬はああ見えて紳士だと思うし。優しいでしょ?」
「…そうかなぁ…。あたし、いっつもやられっぱなし…。」
「艶香の事、可愛くて仕方ないんだよ」
「…そんなことは・・・・。」
相変わらず、うなだれる私を由美が元気づけるかのように私の髪を手ですいてくれた。
「タケルが心配するから、行こっか」
「…マジ、ありがと…。」
ため息まじりで由美にお礼を言う。
事務所に戻ると、私は瞬を睨みつけた。
その視線に気づいてないのか、瞬はケラケラと蓮と話していた。
