「同じ空の下で…」


・・・・なんつ~フェチだ…。


「…それより、着替えないの?」

化粧ポーチをバッグに仕舞いながら、半ばあきれ顔で瞬の顔を見る。

「あ~あ…。はいはい、着替えますよ~」

煙草を灰皿に押し付けると、面倒臭そうに瞬はやっと着替えを始めた。

この何ともいえない心地よい空気感に…いつまでも溺れて居たいと思うのは、私も一緒。



私も同じように煙草に火をつけると、画面の不在着信を確認して、電話を掛け直す。

一件は由美で、もう一件はタケルからだった。


「タケル?どうしたの~?」

「事務所、顔出せる?」

「うん大丈夫だよ。」

「さすがに、土曜は集まり悪いから、書類をまとめるの手伝ってくれないかな?」

「うん、分かった。いいよ」

「由美も来てくれるから、宜しく」

「はぁ~い」



電話を切ると、瞬が呟く。


「…俺の電話よりなげーし…。悪戯して邪魔すればよかった…」




ああ、これが妬いてるってやつなんだ…。

何も言わずに私は煙草を吸いこむと、ゆっくりと宙に煙を吐出しながら灰皿に煙草を押し付けた。



「瞬、見かけによらず、ヤキモチ焼きなんだね。」

「…タケルと艶香は、話すときの距離が近すぎる。」


その言葉を聞いて、声を出さずに含み笑いをすると、瞬に頭を小突かれた。




部屋を出ると、また二人で手を繋ぎ、タケルの元へと足を速めた。


「なんか…雪の…匂いがする…。」


「あれ…、降ってるな。」


私の鼻先に、冷たい物が触れると、同じように繋いだ手にも、ひんやりとした感触を感じた。


暫く、空を2人で見上げ、舞い落ちてくる無数の雪を見ていた。