そのまま、世の恋する人々の為に造られた艶やかな看板を携えたその建物の中に、私達は吸い込まれる様に足を踏み入れた。
────…部屋に入ると、瞬はそのままベッドに仰向けになった。
私は…というと、さっきの雰囲気に任せてこの場所に辿り着いてしまったが、
ふと我に返って色々な事を考えてしまって、
いきなり込み上げて来た恥ずかしさで一杯になっていた。
どうやら、催眠術のような瞬のキスが、私の弱点らしい・・・・。
「つーやーかぁーーーー」
急にいつもよりも甘い声で私を呼ぶ瞬を見ると、ベッドの端から頭を逆さまにして私を見ていて、手招きをしていた。
「なにやってんの?」
おもむろに瞬の横に並んでしまったら、
すぐにでもコトが始まるような予感がひしひしと伝わってきて、
思わず身構えてしまった私は、ベッドには座らずに床に座り、
瞬の顔を覗き込みながら微笑みながら、言った。
「頭に…血がのぼっちゃうよぉ?」
すると、瞬の手が伸びて来て、私の顔を両手で捉え、
「逆さつやか」
といって、私の顔を引き寄せ、短いキスをした。
「・・・・器用だね、瞬。さっき観た映画みたい…」
「脱ぐ、マスクがないな・・・・」
