数日が経ち、紅緋は白姫に呼ばれた








「何用でございますか?」

「まだ鴉天狗の奥さんにお礼渡してなかったよね?」

「はぁ。奥方様に相応しい玉を手に入れるのに時間が掛かりました故」

「用事序でだから羽根の着物は着れないけど、帰りにでも渡せばいいわ」

「用事?」






白姫は頷いて書状を目の前に差し出す









「これを九尾の后殿に渡して欲しいの」

「…其れならば私ではなくもっと上の方がいらっしゃるでしょう」










九尾の后は妖の中でも位が高い故に会える者も限られている


況してや人間である紅緋が易々と会える妖ではないのだ










「お呼ばれしたのはあんただし、蛟の世継ぎも稚児達に任せればいいでしょ?」







呼ばれる心当たりもなく、首を傾げる










「まぁまぁ。あ、これに着替えてね。御前の前だし」








用意された紅地に金の紋様が美しい着物に目を剥く








「そんな…。それならば奥方様から頂いた着物の方が…」

「偵察とか危ない仕事行くんじゃないんだから(笑)それに后殿の手前、きちんとした格好しないと」












それでも渋る紅緋に白姫の堪忍袋の緒が切れた(爆)









「…稚児達や!卑屈な分からず屋を国一番の美姫にしてやりっ!」

『はぁ~いっ』

「!?」









すると、何処から現れたのか二人がいた部屋を埋め尽くす程の蛇の女の稚児や媛達がわらわらと集う










「な、なにご…っ!」







幼い稚児はか弱く、喩え稚児から媛位に上がる者が集まったとしても十程ならば紅緋も逃げようがあったが、なんせ百は越える


まるで泉で溺れる仔犬の如く、彼女達に囲まれて成す術もなく足掻いていた姿が見えなくなった









「紅緋様っ!暴れないで下さいましっ!」

「柔らかーい!姫様の健康的な肌はいつ触っても気持ちいいー!」

「ずるいっ!あたし姫様の艶やかな黒髪しか触った事ないのにっ!」

「もうっ、香油は毎日塗って下さいましと何度も言ったはずですっ!紅緋様は細かな傷が絶えないのですから治癒の際は特にと!」








人間だが稚児達より立場が上で、しかも気遣いの出来る優しい姫君の仕度の手伝いは彼女達にとっては世継ぎを生む次に重大な事









「うーわっ、絶景~」








呑気に体を伸ばし、上から様子を眺めていた白姫は稚児達に言う









「紅これねー。簪はあたしに選ばせてよ~?」

『はぁ~い♪』

「※△○☆#$¥∞!?」









紅緋は後にこう語る






『暫く岩山の稚児達を誰も信じられなくなった(泣)』