「オイ、帰るぞ」


コン、と小気味よい音がして、後頭部に鋭い痛みが走った。

「いっ…った、滝先輩!痛いです!」

「お前が遅いからだろ、アホ」


振り返った先には、パーカスの滝先輩が仏頂面で立っていた。

左手にはケース。右手には剥き出しのスティック。

これで私の頭を叩いたのだろう。


「先輩が脳細胞をスティックで破壊するから、アホになっちゃうんです!」

「いいや、俺はそのアホさを叩いて直してやろうと思ってだな…」

ペン回しの要領でくるくるとスティックを器用に回転させて、ケースに収める。

その動きはいつ見ても感動する。

まるで、スティックが命を吹き込まれたかのようだ。


「とにかく、帰るぞ」

「はーい…先輩、お疲れ様でした!」

「お疲れ様、気をつけてねー」

千尋先輩に挨拶したあと、先に歩き出した滝先輩の背中を追って帰路についた。