数分後、誰も戻って来ないのを確認して
ポケットに入っていたチケットを取り出した。


  ――― これ、いつ渡そう?―――


よく行く店のおばちゃんに貰った遊園地のペアチケット。
特に行く気もなかったので紫音に渡そうと思ったのだがタイミングを逃してしまった。


「なーに見てんだ、凛人!」

「うわっ!?」


いきなり後ろから飛びつかれて体が前のめりになる。


「……んだよ、月原」

「なんか見てたから。で、なにそれ?」

人懐っこそうな雰囲気で笑ってるのは
俺の数少ない友人であり、若干ウザい親友(?)の月原香太だ。


「へぇー、遊園地のペアチケット…」

「俺行く奴とかいないから紫音にやろうと思って」

「俺と行く?」

「ねぇわ。却下。だったら一人で行く」

「ちょ、それは酷くね!?」


肩を落として文句をぶつぶつ呟く月原からチケットを取り返す。