血は見慣れている。

鮮血飛び散る修羅場はウンザリするほど目の当たりにした。

にもかかわらず、そんな藤田でさえもこの現場には顔を顰める。

「えっと…仏はここいらの色町で客を取っている遊女のようです…士族が落ちぶれて湯女に成り下がるっていう典型だったようで…」

なるべく現場に目を向けないように、被害者の説明をする若い警官。

五等巡査といえばまだ経験も浅い。

この現場は直視に堪えんだろう。