瞳に薄い涙の幕を張りながら、 「物憂げな顔ばっかりしてたけど…なんだ、おもしろい子じゃん。」 言いながら男は指で軽く涙をぬぐう。 どうやら本気でツボに入ったらしい。 「あの、えっと…あなたは…?」 私がこの屋敷で顔見知りなのは今のとこ三人。 翼先輩に陸人さん、そして九条先輩。 当然、目の前の男など知らない。