彼は、少し強引に私の手を引っ張った。
これも彼の優しさなのだろうと思った。
しかし、私は素直に喜ぶことができずにいた。
彼だって、少しくらいの恥ずかしさだってあるはずだ。
なのに、何もできない私自身が、惨めに見えた。
私は、その暗い想いをどうにか前向きに持って行こうとするが、心の中に迷いがあった。
いや。
この想いを前向きに持って行って、何が変わっていくのだろうと不安で仕方がなかったのだ。
だけど、彼のおかげで少しは笑顔になれたかな。
ふと、彼の足下を眺める。
その足を踏み出す一歩一歩が、力強く感じられた。