「大翔ぉー♥」

あれ以来、ビクリとする。
『成田大翔』という単語に。
……ううん。気にしないのがいい。
あんなの、ただの事故だし。

「成美?」
聞き慣れた声がした。祐樹だ。
「…祐樹」
祐樹は私の方へ近づいてくる。
「何かあった?」
ああ、やっぱり祐樹は感がいい。
すぐにわかっちゃうんだね。
私、今まで祐樹の優しさに頼ってきたけど、これからは頼らないようにしなきゃ。

「ううん。何でもない」

私、強くなるから。
「そうか?」
祐樹も、私を頼ってくれるように。
「うん。ありがとう」

私は、祐樹と別れ、また廊下を歩き出した。
「…!」
「あ……」
ばったり、成田大翔と会ってしまった。
どうしよう。
と考えながら、廊下を歩き出す。
「……」
私は、すれ違っても無言で通過した。
それなのに。
グイッと、腕を引っ張られた。
「え……」