学園王子は偽カレ⁉

…嬉しい。

大翔が、助けてくれた。

私は隣にいる大翔にお礼を言おうとした。
「大翔…あり」

「成田」

私の言葉を遮って、…私を呼んだ人…柴咲くんはそう言った。

「…成美ちゃん、行くよ」

いきなり名前で呼ばれ、しかも手を握られた。
え…ちょっと。

「柴咲くんあの……」

「…キス、したい」

ズカズカと人ごみで溢れた廊下を進む柴咲くんが、いきなり変なことを言い出した。

「…は?」

私は、その場に立ち止まった。

「…ちょっと来て」

立ち止まった私を柴咲くんはまた歩かせた。

どこ行くの…?


連れられたのは、誰も使わない、空き教室。
中はボロボロで、ホコリがたってる。
しかも、蜘蛛の巣だって、たくさんある。
…嫌だな、ここ。

「…成美ちゃん、かわいいね」

そう言って、私に近づく柴咲くん。
…え、何すんの?

私が一歩下がっても、柴咲くんも一歩こっちに近づく。

そして、背中が壁に当たった。

…私に、逃げ道など、なかった。

「……!」

いつの間にか、両手は柴咲くんの手で上に持ち上げられた。

そして…だんだんと、柴咲くんが近づいてくる。

……やだ。

「……っん」


唇に、された…。

……嫌。

キスは…大翔としか嫌。

私は、声を張り上げ、…あの人名前を呼んだ。


「…ひ、大翔ぉっ……」

でも、涙が邪魔をして、嗚咽が混じった。
泣いてる私をよそに、柴咲くんはまた、顔を近づける。

…ヤダ!


……大翔‼

声にならない声を出した。

バンっと、この空き教室のドアが勢いよく開いた。

…大翔?

大翔、なの?


「……成美に、手ぇ出すんじゃねぇ!」

私が、大好きな声だった。

…大翔。

嬉しい。嬉しいよ、私。
そして、あっという間に、柴咲くんは出て行った。

そして、教室には私と大翔。2人だけ…。


「……大翔、ありがとう」


「…おう」


大きな沈黙が続く。