「成美ちゃん! いらっしゃい」
祐樹のお母さんは、私が来たことに、すごく喜んでいる。
「お邪魔します…」
「成美ちゃん、春採は元気かしら?」
…春採というのは、祐樹のお兄ちゃんで、今は私の家で暮らしている。
「はい…元気ですよ。春採、私立の高校に通ってます」
まぁ、兄弟って言っても生まれたのはほんの数秒差。
だから、春採と祐樹は双子に近い。
祐樹のこと、いつもはバカにしてるけど、祐樹も祐樹なりに大変なんだ。
私は、チラッと隣を見た。
「ん?」
なんて、笑顔でいってくるけど、その笑顔の奥には、辛いことや悲しいことがつまっていて、祐樹は優しいから、きっと、表に出さないんだろう。
何だか、胸が痛んだ。

「じゃあね、祐樹。送ってくれてありがとう」
雨がしとしと降る中、玄関の前で祐樹と別れる。
「おーおー、じゃあな」