「ていうかさ、普通帰れないってわかったらお義父さんなりなんなりに助けを求めるよね」

家に帰ってからの「アキくん」は不機嫌なオーラを全開にした。



「だって・・・あなたが言ったのよ!ひとりじゃなんにもできないって!だから・・・」
「ひとりでできるもん!って?」

まるで試すように、首をかしげながら言う。



「どうせ今日まとめにご飯食べてないんでしょ?」

そう言いながら、とことことキッチンに歩いていく「アキくん」を眺めると、冷蔵庫を開けてなにやら食材を取り出している。



「俺もお腹空いてるんだよね。ただでさえ、部活やってきて疲れてるっていうのにさ・・・」


ぶつぶつと呟きながら野菜を切っている「アキくん」は、相変わらず不機嫌オーラを全開にしている。



「心配かけて・・・ごめんなさい」

キッチンに向かって届くか届かないかわからない声で言う。



「べ・・・別に心配はしてないって言ったでしょ」
「それでも、嬉しかったわ」



少しだけ、距離が縮まった気がする。



「あっ、言っとくけど俺が君にご飯作ることなんて今日が最初で最後だからね」



前言撤回。

悪魔との距離はまだまだ遠いようです。