ホテルのロビーにある、


真っ赤なチェアに座ったその人を見て、思わず顔が緩む。


それでも、私はホテルマン。


営業用のとびっきりの笑顔を用意して、名刺入れを握る。


「あちらの男性です。」


私を呼んでくれたベルガールが声をかけてくれた。


「ありがとう。」



私はゆっくり近づいて、



「お待たせしております。橘様。営業担当の宮田と申します。」

「あ、れ?宮田…?」

「覚えて頂いているなんて、光栄です。橘先生。」


私の名刺を見て、そして、笑ってくれた。



橘先生、たっちゃんは私の3年の担任だった。


悩んでいたあの頃、たくさんお世話になったたっちゃんは私の大事な恩人。



たっちゃんと、忘年会の話を一通りして、お見送りのときたっちゃんが携帯番号を書いて渡してくれた。