僕と顔を合わせるのが気まずかったのか、もしくは避けたのか、深雪さんを迎えに来るはずの大杉は、用事を理由に姿を見せなかった。

タクシーで帰りますと遠慮する彼女を、半ば強引に車に乗せ家まで送った。

迎えに出てきた深雪さんの父親に挨拶をする羽目になったが、挨拶をしたから何がどうなるわけでもない。

次の約束をすることなく、家の前で深雪さん親子と別れて家に戻った。


気になっていた大杉にメールを送ったが、一通目の返信が来ることはなく、僕は懲りずに二通目を送った。


”先輩がハッキリしないから困るんです”


そう言い切った彼女の厳しい顔が浮かぶ。

痛いところをつかれたものだ。

曖昧な態度で深雪さんにきちんとした返事を告げず、流れるまま言われるままに動いている僕に腹が立ったのだろう。



『君から、ハッキリしないから困るんだと言われて愕然とした。言われてから気がつくなんて情けないよ。
もう一度会えないだろうか。話しがしたい』



二通目のメールにも、その日返信はなかった。

大杉が気になりながら、深雪さんの新たな一面に興味を持つ、こんな優柔不断な思いでいたことが、のちに面倒なことを引き起こす原因になるのだが、僕がそれに気づくのはもっとあとのことだった。