ブラザーズ~青い空へ~

『悠之心!一緒に帰ろうぜ!珍しく彼女は一緒じゃないんだな!』

『あー。ちょっと喧嘩したし。健斗!お前居残りじゃなかったの?』

『知らねー!帰る!なあ!今日もゲーセン行こうぜ!』

『俺は行かねー。金もないのに行っても出来ねーじゃん!健斗はお小遣いいくらもらってんの?お前よく金あるね!』

『俺は1500円しか貰ってねーよ!』

『はあ?じゃあなんで金があるんだ?この前千円は使ってただろ?』

『うん。使った。でも時々親が小銭を貯めてる貯金箱があってちょっとずつ抜いてるから全然バレねー!小銭なんて数えてないし200円とか盗ったって絶対わかんねーからな!』

『健斗!お前に罪の意識はねーの?』

『はあ?何言ってんの?悠之心!なんか親みたいな事を言うなよ!悠之心はお小遣いいっぱい貰ってんだろ?お前ん家デカイし!いいよなー!お前の服だって高いんだろ?女子が言ってたよ!俺よくわかんねーけど』

『お小遣いはそんなに貰ってねーよ。しかも来月はお小遣いなしだ。俺は終わってるよ。だから来月もゲーセンは行けねーから』

『えっ?マジ!なんでお小遣いなしなの?』

『俺が悪いことしたからだよ』

『悪いことって?』

『健斗と同じで俺も兄貴の財布から金を盗んだ。そしてバレた』

『マジ?最悪じゃん!怒られた?いくら盗ったんだよ?500円?千円?』

『一万だよ』

『へ?お前バカじゃん!い、一万って!そんなの普通にバレるに決まってんじゃん!お前チャレンジャーだな!俺千円でも無理だよ。小銭ぐらいにしとけって!』

『一万も小銭も一緒だよ。金を盗む事に違いはない。俺は二度とやらねーって誓ったんだ。罪の意識がこんなに痛いものだとわからなかった』

『悠之心!お前時々難しい事を言うよな!意味わかんねーけどじゃあとりあえずどっか遊びに行こうぜ!愛輝がスケボーするとか言ってたけど行く?』

『スケボーね。俺持ってねーし。サーフボードだったらあるんだけど』

『俺だって持ってねーよ。愛輝に借りりゃーいいじゃん!とりあえず帰ったらチャリでお前ん家迎えに行くよ!じゃあ後でな!』

『うん。わかった』

お母さん!俺が悲しませる事をしてごめんなさい。まだ怒ってる?慶兄は許してくれたよ。でも俺は本当に痛かった。お仕置きされた尻ももちろん痛かったけどそれ以上に胸の辺りが痛かったんだ。お母さんと慶兄もきっと同じくらいいや俺以上に痛いのかな?本当にもう二度としません。慶兄が俺達の為に一生懸命働いてくれているしいつも疲れてるのに俺達の面倒見てくれて慶兄には休みもないんだ。龍や虎は慶兄をパパみたいに思ってるし慶兄も龍や虎のパパみたいなんだよ。慶兄の顔を見れば抱っこをねだってまとわりついてる。お父さんがあまり家にいなかったしあまり抱っこなんかしてるのを見た事がないけど慶兄は毎日龍や虎を抱っこしてくれているよ。俺の事も抱きしめてくれたりリビングで寝ちゃってたらベッドまで抱えて部屋まで連れてってくれる。慶兄はどうして俺達の為にあんなに頑張れるんだろう?お母さん!俺達は大丈夫だから心配しないでね。

『ただいまー』

『悠ちゃん!おかえり!おやつあるよ!手を洗っておいでね!』

『はい。ありがとうございます。龍!ただいま!虎は?』

『おかえりー!悠兄!虎は知らない!公園行ったんじゃないの?おやつ食べて外行ったよ』

『ふーん。龍は?遊びに行かないの?』

『うん。だってソウタくんが宿題終わったら遊びに来るって言ってたもん』

『そうなんだ。龍は宿題終わったの?』

『終わったよ!だからゲームするんじゃん』

『あっそう。早いな。夜にも家庭教師来て勉強するのにえらいねお前は!虎はやってないんだろ?』

『宿題なんかすぐ終わるもん!夜は受験の勉強したい!虎は宿題やってないよ!いつもやらないじゃん』

『そうですね。あっ!友達来たんじゃないの?モニター見ろよ!』

『お姉ちゃんが見てくれるよ!』

『あっそう。俺もおやつ食って出ようかな』

『龍ちゃん!ソウタくんが遊びに来たよ!』

『はーい!』

『悠ちゃん!何飲む?牛乳?ジュース?』

『ジュースがいいです』

『はい!どうぞ!今日ちょっと失敗してあんまり美味しくないかも。バナナケーキ焼いたんだけど』

『いただきます!うまいですよ!千佳さん!いつもおやつまで手作りしてくれてありがとうございます。俺達の為に本当にありがとうございます!』

『もう何?悠ちゃん!日に日に慶太郎みたいになっていくんだから!私がしたくてやってるの!美味しいって悠ちゃん達が食べてくれると嬉しいんだよ!ありがとう!悠ちゃん!失敗したのに!』

『だって本当にうまいから。手作りのおやつを食べられる事は当たり前の事じゃないです。千佳さんが来るまでコンビニのスナック菓子だったし本当に嬉しいです。龍や虎もいつもおやつは何を作ってくれるんだろうって学校に登校する時から言ってるからそれぐらい楽しみにしてるんですよ。だから本当にありがとうございます。これからもよろしくお願いします。どうしたんですか?俺なんか悪い事を言いましたか?すいません』

『違うよ!悠ちゃんの優しさが嬉しくて泣いちゃった。ごめん!悠ちゃん!抱きしめていい?』

『あーはい!』

『悠ちゃんのそういうところ慶太郎にそっくりなんだから。悠ちゃんは優しいね!慶太郎の弟だもんね!』

『そうですか?俺は慶兄みたいになれるようにもっと頑張ります』

『頑張らなくても充分悠ちゃんは慶太郎を追ってるよ!だから心配にもなるよ。自分が傷つくのはいいけど人が傷つくのは嫌ってとこ!はい!食べてよ!次はもっとおいしく作るからね!』

『はい!』

お母さん!やっぱり慶兄が選んだ人は優しい人だよ。龍や虎の面倒も一生懸命で目一杯愛してくれている。俺達は本当なら施設に行っていてもおかしくないんだよね?お母さんが事故にあって死んじゃってお父さんは普段もたいして帰ってきてなかったけど本当にもう帰ってこなくなっちゃって俺、慶兄が帰ってきてくれなかったら不安で不安でしょうがなかったと思う。俺達3人はバラバラの施設に行くのかなとか余計な心配しなくて済んだから俺はあの日慶兄の前で泣けたんだ。ちゃんとさようならをさせてくれたのは慶兄だよ。俺も慶兄みたいに弟を守れる兄貴になる!お母さん!そっちからちゃんと見ててね!

『ごちそうさまでした!俺、健斗と遊んできます!』

『はい!行ってらっしゃい!悠ちゃん!気をつけてよ!』

『はい!』

悠ちゃん!悠ちゃんも時々慶太郎みたいに哀しい顔を見せるんだよ。悠ちゃんはそれに気づいている?もっと甘えてよ。悠ちゃん!慶太郎にどこまで似ていくのよ。