ブラザーズ~青い空へ~

壮ちゃん!チビ達も二学期が始まりいつもの慌ただしい日常を送っているよ。拓海も予備校に通うようになり朝から晩まで頑張ってる。駅が少し遠いからバイクで予備校に通いたいとバイクをねだってきたんだ。俺が断固拒否したから拓海もすぐに察知したようでいつものようなわがままを言ってしつこくねだる事はなかったから良かった。代わりにBMXを買ってくれとねだられ12万程のチャリを買わされんだけどね。今年の冬には高卒認定の合格を得る事を約束に。まああいつは余裕だろうね。問題は再来年の大学受験だよ。壮ちゃんみたいな医者にはなってもらいたくないけど。だって自分の体を放っておいて病気になるなんて嫌だ。あーもう時間だな。まだ資料が出来てないけど出るか。

『中井さん!じゃあ俺、出るんで事務所お願いね。時間が来たら上がってね。俺の部屋は鍵を閉めてるから大丈夫です。じゃあお疲れ!』

『はい!わかりました!お疲れ様です!』

『もしもし?原口くん?お疲れ!俺は事務所出るけど現場は大丈夫だよね?』

『お疲れ様です!はい!大丈夫です!土曜なんで量も少なく充分回ってます!』

『はい!わかった。じゃあしっかりミスのないように頼むよ!お疲れ!』

『はい!わかりました!お疲れ様です!』

えっとナビではここらへんのようですけどマンションなんか見当たらないね。あっ!ここか?アパートなの?マンション名じゃなかったのか。

『こんにちは!初めましてではないんですよね。高見慶太郎です。すいません。遅くなりました!』

『こんにちは!慶太郎さん。こちらこそわざわざ家まで足を運んで頂いてありがとうございます。散らかってますがどうぞ』

『はい!お邪魔します!小川さん!想史郎くんは遊びに行ってるんですか?』

『いえ。部屋にいます。呼んできますね。想史郎!あなたのお兄さんの慶太郎さん。この前お話ししたでしょ?ご挨拶して』

『想史郎くん!こんにちは!初めまして。俺は君の兄貴だよ。よろしくね』

『こ、こんにちは』

『学校は楽しい?』

『うん。ぼ、僕遊びに行ってくる!』

『想史郎!どこへ行くの?せっかく慶太郎さんがわざわざ想史郎に会いに来て下さったのよ!もっとお話ししなさい』

『想史郎くん!俺も一緒に遊びに連れて行ってよ!公園行くの?』

『う、うん』

『よし!じゃあ行こう!公園どこにあるの?近く?』

『うん』

『想史郎!俺と買い物に行こうか?何か欲しいものはある?』

『げ、ゲームほしい』

『よし!じゃあ買いに行こう!車に乗って!ちょっと待ってよ。調べるから。おっ!ショッピングモールが近くにあるね。ここに行こう!想史郎!お母さんは好き?』

『うん!』

『そう。想史郎はずっとこの町に住んでたの?』

『うん。たまに叔父さんの所やおばあちゃんの所に住んでる』

『ん?どういう事?おばあちゃんの家とかに泊まりに行くって事?』

『う、うん』

想史郎は幼い頃の慎二郎の顔によく似ていた。でも明らかにとても金銭的に苦しい生活をしているように見えた。想史郎が身につけている服や靴には穴があいていたり家も殺風景だった。親父は養育費を払ってこなかったのだとこの時俺は怒りを覚えた。余りにも無責任過ぎるだろう。悠達が穴のあいた服や靴を身につけていたか?ブランド物の服や靴が未使用のまま小さくなっている暮らしをしていたんだ。想史郎にもそれなりの養育費を払うべきだろ。

『想史郎!だいたい必要な物を買ったけど他に必要なものはない?』

『うん。ない』

『小川さん!すいません!想史郎に小川さんの許可なくゲームを買い与えました。それからこれは想史郎の服や靴、下着や靴下を買ったので使って頂けると嬉しいです』

『慶太郎さん!こんなに沢山すいません!ありがとうございます!想史郎!慶太郎さんにそんな高い物を買ってもらって御礼を言ったの?』

『言ってない。あ、ありがとう』

『うん。想史郎!また買い物行ったり遊びに行こうね!』

『うん!』

『小川さん!すいませんでした。親父は養育費を払っていないんですよね?小川さんと想史郎に苦労をかけさせるような事をしていたようで大変申し訳ありませんでした』

『慶太郎さん!違います!頭を上げて下さい!和さんからはちゃんと充分な程の養育費を頂いておりました。想史郎の為に使わなければならないお金を私が使ってしまっていたんです。想史郎が小学校へ上がる頃から私が入退院を繰り返しているものですから医療費がかさんで想史郎の為のお金を私が使ったんです。入院している間は親戚の叔父や実家に想史郎を預かって貰っていました。ですから和さんが悪いんじゃないんです。 私が想史郎のお金を使ってしまい想史郎に充分な事をしてやれていないだけなんです。すいません』

『そうですか。親父に医療費の事を言わなかったんですか?』

『はい。和さんは想史郎の為に充分すぎる程の養育費を毎月振り込んでくださいましたから』

『言えば良かったじゃないですか。養育費を親父は払うべきなんです!あなたに想史郎を生ましたんだから親として養育費を払うのは義務ですよ』

『違います!私が勝手に生んだんです。和さんは妊娠がわかった時望んではいませんでした。私自身元々体が弱い事もあり1人で育てる事は無理だろうと反対されていました。それでも私は生みたかった。後悔はしていません。でも想史郎には苦労ばかりかけて申し訳ないと思っています』

『わかりました。それでも小川さんの体が弱い事を知っていたなら尚更もっと気を配るべきだし親父が無責任な事をした事になんら変わりはありません。すいませんでした。今後の医療費と想史郎の養育費は俺に支払わさせて下さい!毎月100万あれば足りますか?いくら必要なのか教えてください!小川さんと想史郎が幸せに暮らしていけるだけの額を振り込まさせてください!小川さん!俺の弟を想史郎を生んでくれてありがとうございます』

『慶太郎さん!どうしてですか?私はあなた方のお母さんに対して失礼な事をしたんです。あなた方お子さんをも傷つける事をしたんですよ!』

『そうですね。でも想史郎には関係ない事じゃないですか。想史郎に罪はありません。お義母さんには俺も謝罪しておきます。小川さん1人の責任ではなく親父にも勿論責任はあるんですから親父が姿を消した今あの家の主は俺ですから。俺ができる限りの事をさせて下さい!その代わり俺から一つだけお願いがあります。想史郎に沢山の愛情を注いでやって下さい!お願いします!想史郎を無理してでも生んでくれた小川さんですから想史郎を愛してくださいますよね?』

『はい!もちろんです。あの子は大切な子です。想史郎を愛しています』

『ありがとうございます。それだけで俺は嬉しいです。今日はとりあえずこれだけ渡しておきます。足りない分は言ってください。想史郎をお願いします。愛情は必要なんです。お金で買えないんですよ。俺がそうでした。だから想史郎には沢山愛情を注いでやって下さい!』

『はい!ありがとうございます。慶太郎さん。本当にありがとうございます』

『いえ。ではまた想史郎に会いにこさせて頂きます!今日はこれで失礼します!想史郎を呼んで貰っていいですか?』

『想史郎!慶太郎さんが帰られるって。挨拶して!』

『想史郎!また俺と会ってくれよ。さようなら想史郎!またね!』

『さ、さようなら』

壮ちゃん!やっぱり俺は怒りを覚えます。親父は想史郎を1度拒否したんだよ。それでも壮ちゃんは無責任な親父でも許せって言うの?もちろん感謝はするよ。でも俺の弟が1人でも苦しんでいた事は紛れもない事実だよ。想史郎!苦労したね。お前ちゃんと食事を取っているの?龍や虎みたいに小さいじゃないか。想史郎!今まで苦労させてごめんな。お義母さん!親父が悠と龍、虎が生まれる間に浮気をしていた事を知っていましたか?すいませんでした。でも俺の弟である事に変わりはなく想史郎に罪はないんです。だから俺が悠達と同じように接していく事を許して下さい。悠之心、龍之助、虎之助には今までと変わりなく全力で育てていきますから。お義母さん!あなたの宝に対し手を抜く事はしません。もし俺が手を抜きあいつらに対し愛情が足りなければ俺を罰してください。