ブラザーズ~青い空へ~

『はい!みんな行くよ!準備出来た?龍と虎は携帯をちゃんとリュックに入れてる?』

『うん!昨日から入ったままだよ!』

『僕も出してないから入ってる!』

『え?お前らちゃんと充電してる?自分で充電してよ!肝心な時に使えなかったら意味ないんだからね!』

『うん!わかった!』

『お姉ちゃんが充電してくれるじゃん!』

『虎!だから自分でしなさい!お姉ちゃん任せじゃダメって言ってるでしょ!わかってるの?』

『もう!わかったよ!』

『なんで逆ギレしてんだよ!わかってないから言ってるんだ!はい!もう車乗って!行くよ!拓海!早くしなさい!お前も何やってんの!』

『ちょっと待ってよ!髪型決まんない!ワックスが無くなった!慶太郎にーちゃん!ワックス買って!』

『デートじゃねーんだから髪型なんかどうでもいいだろ!もう早くしろよ!置いていくぞ!』

『わかったって!ちょっと待ってよ!髪型決まんないとまじテンション下がる!』

『お前は無駄にテンション上げなくていい!慎二郎!チビ達乗せてて!』

『はいはい!拓海!早くしろよ!兄貴キレさせんじゃねーよ!こっちにとばっちり来るだろ!』

『わかってるって!』

『はい!行くよ!あっ!龍!虎!おしっこした?』

『したよー!』

『僕もしたー!』

『じゃあ出発しますよ!慎二郎!お前帰り運転頼むよ!俺は飲まされるから』

『了解しました!』

ヤバイ。10時集合なのに拓海がモタモタしてるからちょっと遅れちゃいそうじゃねーかよ。俺達のグループは時間にうるさいんだよ。完全に俺の奢りだな。まあ遅れなくてもどうせ俺が支払うんだろうけどね。だいたい俺があいつらから奢ってもらった事は1度もねーじゃん。大人になっても変わらぬこの状況はなんだ?まあ別にいいんだけど。俺はあいつらにもいっぱい迷惑かけてるからな。

『悪い!遅れた!すいません!けっこう飛ばしたんですけどね!おう!雄一郎!誠!久しぶりだな!仕事はどうですか?』

『慶太郎!久々!元気そうじゃん!俺は毎日ペコペコ営業回りでやってられねーよ』

『慶太郎!変わらないっすね!相変わらず儲かってるらしいじゃないっすか!俺は建築回ったけど景気わりーよ!』

『誠が営業!?意外だね。君が頭下げるとはねー。雄一郎は建築やってんのか。お前電気工事は辞めちゃったんだね。いってぇー。なんすか?大輔!俺なんか蹴りいれられる事をしましたっけ?遅刻はすいませんでした。俺が原因じゃなく拓海なんすけどね』

『言い訳はいらねーよ。全員連れてあの丘の上にあがれ!』

『はいはい。あそこはなんすか?チビ達はアスレチックがしたいらしいんですけど』

『あー後で充分遊ばせてやるから。拓海!ちょっと来い!』

『龍!虎!はぐれないでよ!ちゃんとついてきて!千佳!大丈夫?ちょっと坂道だしキツイんじゃない?』

『うん!でも大丈夫だよ!歩くのはいい事なんだし。空気が気持ちいいね!こんなところがあったんだ!』

『慶太郎兄ちゃん!見てあっちの方!海が見えるよー!あれ!海でしょ?』

『あーほんとだ。海だよ!虎!すごいね。山の上から海を眺められるんだな!綺麗だね!あっ!ユズル!もうここにいたの?つうか謙也?久しぶりだね!出張から戻ったのかよ!』

『あー!慶太郎!マジ久しぶり!元気そうでなによりですね!』

『まあーそうっすね。なんとか元気ですよ。何ここ?教会?』

『そうだよ!慶太郎!お前らの結婚式を今からやるんだよ!だから俺ら全員集まったの。お前の結婚式なんだからな。大輔が見つけて色々手配したんだぜ。聞いてる?慶太郎?』

『あー。聞いてるよ。ユズル!俺なんて言っていいのかわからない。ありがとう以上の言葉がないからどう表現していいかわからないよ』

『慶太郎!千佳!お前らあっちで着替えてこい!チビ達は俺達が見て着替えさせておく』

『大輔!お前相変わらず俺に借り作らせるよね。俺返しきれねーよ』

『借りじゃねー。頼みだ!俺はお前らにちゃんと式を挙げてほしい。お前の事だからどうせ豪華プランを考えてたら時間なんかなくて結局仕事と生活に追われるだけだろ。ガキが生まれる前にケジメはちゃんとつけとけよ。ゆっくり時間が出来た時に勝手に好きなとこでも行って豪華な式でもやってこい!そんないつになるかわかんねー事より近場で家族と俺らだけでも充分祝う事は出来るんだよ!だから祝わせてくれ。頼む!慶太郎!俺ら親友だろ』

『大輔!お前中学の時から変わらないままだな。そのセリフも。ありがとう大輔!どんな豪華プランでも負けるよ。勝てる気がしねー。本当にありがとう。千佳はこういう事を望んでいたんだよな。バカだな俺。全然わかってなかった』

壮ちゃん!俺、今日結婚します。壮ちゃんが遠くへ逝ってしまった今日と言う日に心配ばっかりかけてしまった壮ちゃんに俺が結婚する事を報告させてください。

『大ちゃん!ありがとう。嬉しい。私達の事で大ちゃんにはいっぱい心配かけたよね。ごめんね。私、慶太郎のそばにいられて幸せ』

『千佳!慶太郎を頼むよ!もう慶太郎から離れるな!幸せになれ!』

『うん!もう幸せだよ!私は充分幸せ!だけど慶太郎を絶対幸せにする!今度こそ離れないよ!ありがとう大ちゃん!慶太郎には本当に素敵な仲間がいる』

『慎二郎兄ちゃん!結婚式どうやるの?』

『見てたらわかるよ!兄貴と千佳さんに心からおめでとうって言ってやるんだ!』

『千佳!綺麗だよ。とても似合ってる。大輔達に感謝してもしきれない』

『うん!本当に幸せだね。私達』

俺達が式を挙げる事になった教会は丘の上に建つ小さな教会だった。山の上から母なる海を眺めることが出来るこの小さな教会に大輔!恭一!ユズル!雄一郎!誠!謙也。俺が転校した公立中学からの仲間が集まってくれ俺の大切な家族と共に俺達の小さな結婚式は始まり大きな感動と幸福をもたらした。

『慶太郎にーちゃん!おめでとう!千佳ちゃんをこれからもずっと幸せにしてあげてよ!俺の大事なお姉ちゃん泣かせないでよね!泣かしたら俺がパンチ入れるから!それからいつもありがとう!』

『あー。ありがとう拓海!お前のパンチなんてかすりもしねーけどその時はかわさず受けるよ』

俺は拓海から千佳をしっかり受け取った。拓海!ありがとう。お前は1人だけ俺の過去の1つを知る者として自分の胸にしまってくれているね。17歳のお前を抱きしめているとバカだった自分を思い返すよ。お前には迷子になってほしくない。ずっと見てるからな。安心して自分の道を歩んでくれよ。お前に出逢えて良かった。

『よっしゃ!次はロッジでバーベキューだぞ!おい!ガキんちょ達おいで!』

『はーい!』

『慶兄!おめでとう!ここの景色最高だね!母なる海の優しい波音が聴こえてくる気がする!こんなに離れているのに。きっと母なる海がおめでとうって包んでるんだね!だってあんなに青く穏やかじゃん!俺もいつかここで結婚式したい!』

『悠!ありがとう!本当にお前は俺にどんどん似てくるな。君はまだ10年はえーんだからね!ありがとう悠之心!さあ!俺らも行こう!』

『うん!』

悠!これからも母なる海の優しい波の音を感じ取れるお前でいてくれな。この山に溢れる力強いパワーもお前は感じ取れているはずだよ。海が母なら山は父だ。山の偉大な力強さは父なる大地から育まれている。俺も強くならないとな。俺も父親になるんだからね。頑張るよ。お前達を誰一人暗闇に迷いこませたくない。

『慶太郎!千佳ちゃん!結婚おめでとう!かんぱーい!』

『かんぱーい!』

『ありがとうございます!本当にありがとう!みんな!感謝しきれませんよ!大輔!恭一!ユズル!誠!雄一郎!謙也!慎二郎!拓海!悠之心!龍之助!虎之助!ありがとうございます!俺はこんな恵まれた事をしてもらえるような人間じゃないのに心から感謝します。一生忘れません』

『慶太郎!飲むぞ!おい!チビ達焼けたぞ!いっぱい食え!』

『うん!』

『慶太郎!おめでとう!』

『ありがとう!大輔!』

『式は俺らからのプレゼントだけどバーベキューはお前の奢りだからな!』

『あーはい。わかりました。ありがとうございます!大輔!マジ!ありがとう!お前には本当に助けられてばっかりだな』

『お互い様だろ!飲もうぜ!慎二郎と拓海がいるんだから!』

『そうですね。飲みましょう!』

壮ちゃん!俺達の結婚式を見ててくれましたか?青い空を今日はとても近く感じました。空も海も青く美しくとても大きく素晴らしい日に恵まれた1日を俺は過ごさせてもらいました。俺はこの素晴らしい景色と感動を胸に刻み忘れません。ありがとうございました。