ブラザーズ~青い空へ~

『ウェっ!ハァハァ、ヤバイ。回ってる。大輔!なんで俺に新規回すんだよ!勘弁してよ!俺は現役じゃないんすよ!あれは詩音でもいけましたよ』

『いやあれは慶太郎好みだ。女社長だっただろ!俺の読みは当たりだな。ほら!水!慶太郎まだ前半だぞ!もうすぐママが来る。それに他の客もいるしノルマ達成お前は余裕でやってくれるな!さすが元ナンバーワンだ。400万いけるか?』

『バカだろ大輔!無理だ!マジ勘弁して。終わったら解放してくださいよ!ハァハァ。もうけっこう俺回ってるんだよ。あーキツイ』

『慶太郎!お前に任せたいガキがいる。次の客お前のヘルプにつかせるわ』

『こんなヤバイ俺に問題児預けるって事ですか?参ったね。大輔がそんなの拾うって珍しいっすね。使えない奴はすぐキリたがる大輔くんじゃないっすか。指導は大輔の方が上手いのに俺なんすか?』

『あーお前だ。お前にしか出来ない。早く行けよ。拓海!タクミ!ちょっと来いって!』

『なんすか?』

『こいつが慶太郎!俺の親友で店のオーナーはこいつ。俺に店を任せっきりだけどな。手始めに慶太郎のヘルプにつけ』

『え?ヘルプ?俺がヘルプ?俺は稼げる!』

『なるほどね。拓海!よろしくな!行くぞ』

『いって!てめぇ!どこ見て歩いてんだよ!』

『はあ?お前こそ新人のくせになに調子に乗ってんだよ。っうぅ。っぐ』

『こら!拓海!仲間同士で喧嘩すんじゃねーよ!一樹大丈夫か?お前ら仕事しに来てるんだろ?拓海!謝れ!一樹はお前の先輩だ!』

『実力世界で先輩も後輩もねーよ!あんただってやれるぜ!俺は!強い者が生き残るんだよ!っうぅ。いってぇーくっそ!待てよ!』

『おっと。もういいよ!お前はヘルプなんか無理だな。酔っ払ってる俺にからんでくんじゃねーよ。お前のパンチなんかかすりもしねーんだよ!喧嘩する為に来たんだったら帰れ!俺は誕生日で稼がなきゃいけねーからお前のパンチなんか食らってやれねーの。悪いな。大輔!ヘルプチェンジ!俺が終わるまでこいつ捕まえてて』

『放せよ!なんだよ!俺だって稼げるよ!』

『うるせーんだよ!お前は後で相手してやるから待ってろ!いいな!拓海?』

『お前に指図なんかされたくねーよ!』

『まったく困ったクソガキだね。まあ大人しく待ってろ。大輔頼んだよ!』

『了解した!慶太郎!ママ来たぞ。あと7番テーブルでお待ちだ』

『了解しました。頑張ってきます』

なんだあいつは?大輔!そうか。拓海は昔の俺達か?とくに俺なんだな?だから珍しく拾ったんだろ。昔の俺を大輔は拾ったんだな。だから俺に任せるって事か。俺まだ大変なんですけどね。しょーがねーか。出逢っちまったって事はそういう運命なんだよな。

『ママ!こんばんは!今日はわざわざ俺なんかの為にありがとうございます。また車も頂いてママにはお世話になってばっかりですいません』

『何言ってるの!慶ちゃん!誕生日おめでとう!慶ちゃんと大ちゃんあんた達が立派になってくれただけで嬉しいわよ。あんた達は息子同然だからね。飲むわよ!1本あけなさい』

『はい!ありがとうございます。いただきます!俺、ママにまだなんにもお返し出来てないっすね』

『心配かけないでちゃんとやっててくれる事があんた達が出来る親孝行みたいなものよ。三店舗目もやるらしいわね。上手くやりなさいよ!』

『はい!頑張ります。大輔かいますから。あいつが居なかったら俺はここまで出来てませんでした。ママにもですけど大輔にも感謝しています』

『そうね。あんた達兄弟みたいな者だものね。あっ!慶ちゃん!誕生日プレゼント。大ちゃんにも渡したんだけど気にいってはめてくれてるわ。慶ちゃんにも同じものをと思ってね』

『誕生日プレゼントってもう高い車貰ってるじゃないっすか』

『あんた達は若いんだからなめられないように時計はいい物をはめておきなさいって言ってるでしょ。あんた達にはお揃いの物を身につけててほしいのよ。母心なんだから受け取りなさいよ』

『はい。いい物って今はめてるのだってママから貰った充分いい物っすけどね。俺はママから貰った時計しかはめてませんよ』

『それは去年のじゃない。22歳になったんでしょ。また新しい1年の始まりなんだから取り替えておきなさい。大ちゃんももう取り替えてるわよ』

『はい!じゃあ今取り替えます。ありがとうございます!ママ。俺らが今こうして生活出来るのはママのおかげです。本当にありがとうございます』

『やっぱり似合うじゃない。何か困ったことがあったらすぐに言うのよ。あんた達は私の息子だと思ってるんだから。ほら!飲みなさい!』

『はい!ありがとうございます!』

あー終わった。気持ちわりー。ママのロックが効きまくってあのあと由美さんだったけ?話し聞いてねーけどうまくやれたのかな?あーもう足にきてるぞ。吐きたい。

『慶太郎!大丈夫か?吐き出したか?ほら!水!』

『ハァハァ、あ、ありがとうございます』

『290万だよ!慶太郎!よくやった!もうちょい飲んだら300いったんだけどな!』

『勘弁してくださいよ!充分じゃないっすか。ハァハァ、拓海は?』

『いるぞ!休憩室!とりあえず代行呼んでるから2台持って帰れよ!お疲れ!』

『あーありがとうございます。すいません。また車が届くんでよろしくお願いします。じゃあ店頼むよ!大輔!俺はもう限界』

『おう!了解した!お疲れ!慶太郎!』

『お疲れ!大輔!タクミ!拓海!おい!ハァハァ!帰るぞ!』

『どこへだよ!っぐぅ、いってぇー、っく、あんたもボクシングやってたんだろ?くっそー!っぐぅ、うぅ、あぅっ、いってー、ご、ごめんなさいっく、ぐぅっく』

『ハァハァ、酔っ払ってる俺に勝てねー程度でいきがってんじゃねーよ。早く来い!それともまだ俺にボコられたいか?』

『い、嫌だ!いってぇー。何それ?空手?』

『なんだっていいんだよ。俺は飲まされまくってフラフラだし疲れてんの!早く来い!拓海!乗れ!運転手さん!聞いてるかな?2台持って帰らないといけないからついてこさせてね!自宅にナビセットして行ってよ!』

『はい!聞いてます。では行きます』

『拓海!お前いくつ?』

『二十歳』

『履歴書上はだろ?別に嘘つく必要はねーよ。俺も17歳からホストやってたから』

『5月に17歳になった』

『んでホストやりたいのか?』

『やりたいも何もホストしかやった事ねーよ。三ヶ月違う店でやってた』

『高校を辞めたからだな?んで生きる為?親は?家はあるのか?』

『家は出たからツレの所を転々としてる。親は俺なんかいらないだよ。落ちこぼれた俺なんてもう終わってるんだ!魁聖退学になった俺なんかお荷物でしかないんだよ。だから探しもしねーし俺がいたら迷惑なんだよ。恥さらしだって』

『親がどう思ってんのかを俺は知らねーけどお前の夢はなんだ?』

『夢?んなもんあるわけねーじゃん!もう俺は終わったんだよ!バカじゃねーの!いってぇー!叩くなよ!なんだよ!』

『お前17歳だぞ!高校中退したぐらいで人生終わるわけねーだろ!バカ!俺も魁聖中学合格組だ。俺は中1で退学になったからお前は高等部まで進んだならまだ優秀じゃねーか。お前は俺の後輩だな』

『え?慶太郎も魁聖?いってー!頭殴るなよ!バカになるじゃんか!』

『お前は充分バカだ!魁聖の先輩だってわかって呼び捨てか!拓海!お前!勉強する気はあるか?俺はしたぞ。高卒認定受けて大学受験もした。大学にも受かったけど俺はホストとして運良く成功していたから店も持ってたし会社も作って忙しく結局大学には1度行ったっきりだ。もしお前が本当にホストがしたいなら大輔に指導してもらうけどただ生きる為ならやめとけ。お前は魁聖に入る為に相当な努力をしてきたはずだ。だからお前は努力ができる。やらないだけだろ。逃げてるだけ。お前が勉強してやり直したいって言うんだったら生活の面倒も学校も行かしてやる。でも俺の弟と同じように扱うから厳しいぞ。生きる為の心配はしなくていい。どうする?拓海。お前の人生はまだ終わってなんかねーよ!これから始まるんだ!お前はやれば出来る子だろ』

『っく、うっく、な、なんで?うっく、俺の面倒見て慶太郎にメリット、っく、ねーじゃん!っく、うっく、痛い!っく』

『誰が慶太郎だ!学習しねーな!俺にメリットなんて必要ねーんだよ。お前と出会ったのも運命だから。しいて言うならお前は昔の俺だからかな?もういいよ。拓海。強がって生きなくていい。お前はまだ17歳なんだ。俺が躾てやるからまともな道に戻れ。戻りたいんだろお前は?迷子になったんだよな?』

『っく、うっく、俺まだやり直せんの?っく』

『あー。余裕でな。俺ん家に住めばいい。部屋はある。お前が進む道を一緒に探そう。俺が見ててやるから自分の足で進め。俺が出来る事は協力する。わかったか?』

『っく、う、うん!』

『拓海!まずは高卒認定資格の受験だな。まあお前なら余裕だろ?問題は大学受験だ。まだ1年ある。進みたい道をお前は必ず見つけるはずだよ』

『本当?本当に俺に出来るの?』

『出来るって言ってるだろ。お前は出来る子だ。ただやらないだけ?やるのか?やらないのか?どっちだ!拓海!』

『やる!』

『よし。やるって言った以上ちゃんとやれよ!俺は厳しいからな!覚悟しとけよ!でもお前がもう迷子にならないようにしっかり見ててやるから!わかった?』

『うん!わかった』

『着きましたよ!2台共ガレージに入れていいですか?』

『あーそうだね!入れといて!領収書切って店に出しておいてね!』

『はい!わかりました。いつもありがとうございます!』

まためんどくさいのを拾ったよ。でもこいつが1番手がかかりそうだ。なんてたって昔の俺みたいだからな。拓海。お前の人生は終わりなんかじゃない!終わらせるか!これから始まるんだよ。大輔!確かに預かったよ。昔の俺達を。ちゃんと迷子から抜け出させるよ。