ブラザーズ~青い空へ~

『もしもし?藤井くん?お疲れ!現場は行けそう?俺はもうすぐ事務所出るけど大丈夫?』

『お疲れ様です!なんとか回ってるんで大丈夫です!』

『はい。俺は酔い潰れるんで河原くんに閉めをしっかり頼むよって伝えておいてね!じゃあよろしく頼むよ!お疲れ!』

『はい!わかりました!お疲れ様です!』

『社長!お疲れ様です!』

『おう!お疲れ拓也!今日は何時?19時過ぎてるよ!』

『はい!すいません。授業のノートを写させて貰ってたら遅くなってしまいました』

『お前ちゃんと授業受けてるか?お前は学校があるから遅れるなら連絡すりゃ別にいいけど勉強が疎かになるようじゃダメだよ。お前の学費は誰が払ってくれてるんだよ?』

『親です!』

『ですよね。バイト代は君のお小遣いだよな?お金を得るって大変だろ?お前は授業が終わってからだから夜勤だし仕事に疲れて学校に行けない時もあるんじゃないのか?でもお前は遊び代を得る為に働いてるんだよな?親はお前が一生懸命勉強してると思って通わせてくれてるんだよ。働くって事が大変だってわかってるんだから親が働いて払ってくれてる学費を無駄にするなよ!』

『はい!わかりました!頑張ります!社長はデートっすか?なんかホストみたいっすね!めっちゃかっこいいっす!』

『バカか!デートなわけねーだろ。まあ元ホストだけどな。たまに店に出されるんだ。今からホストをやってくるんだよ。かっこいいだけの世界じゃねーの。大変なんだよ。飲むのが仕事だからね。俺が経営者なんだけど何故だか俺が使われてるって言う頭が上がらない人ってのがいるんだ。今日は金曜で現場は忙しいからな!頑張ってくれよ!じゃあお疲れ!』

『はい!頑張ります!お疲れ様です!あっ!社長!俺もいつか飲みに連れて行ってください!』

『お前が二十歳になってちゃんと仕事が出来るようになったらね。お前今年二十歳か?早く仕事覚えて下さいよ!じゃあ!頑張ってね!』

『はい!わかりました!お疲れ様です!』

拓也が2年だよな?後2年で大学卒業か。俺のとこに就職したいって言ってるけど来年は就活させないとな。やるだけやってダメなら仕方ないけど就活するのがめんどくせーだけなんじゃねーのかって感じにも取れるしね。やる気がないわけではないんだけど。手抜きして就職出来ると思わせるのは良くないし就活しろとは言ってはあるんですけどね。バカ大学で有名とは言え就職先ぐらいはあるだろ?いちお大卒になるんだから。まああいつは本当にバカだけどね。よく受かったよな。俺も大学は受かりましたよ。ムカつくから螢桜大学受かったんですが単なる親父へのアテつけで受験しただけだからな。高校中退して高卒認定受けて大学も受かったけど行く気なんてさらさら無かったしとりあえず学校なんか通う暇がなかったから1度しか通ってない。もちろん自分の金でだ。18歳でもう店の方を任されていたし19歳では自分の店を持っていたからな。ただ俺は親父に負けねーんだって事を見せつけたいだけだったね。それに意味があったのかわかんねーけど。今思えばくだらねープライドの為に無理したんだけどまあ努力は無駄じゃなかったと思うよ。壮ちゃんは俺に大学へちゃんと通ってほしかった?俺全部中途半端だもんね。中学は退学、高校も中退そしてまたいい大学に受かったのに中退。中途半端な事をすると壮ちゃんは怒ったよね。でも大学は本当に行く気なんてなくて親父に認めてもらいたかっただけの受験だから許してよ。いちお仕事をちゃんとしてたんだからさ。

『おはようございます!慶太郎さん!』

『おはよう!詩音!うちのナンバーワンホストの詩音くんは調子いいみたいですね。これからも頑張ってよ!力也に抜かれないようにね!』

『はい!頑張ります!』

『お疲れ!大輔!』

『おう!慶太郎!お疲れ!時間は守るようになったなお前!』

『そうっすね。散々先輩や大輔達にボコボコにされて喝入れられましたからね。俺、晩飯がまだなんすけどもう飲ませます?』

『そんな暇があるわけねーだろ。2番テーブルと5番テーブル回ってこいよ。プレゼント抱えてお待ちだぞ。まあ今日は200万以上あげてこいよ!お前のノルマ!ノルマ未達成ならボコるぞ!店には使えねー人間をお前のボランティア精神で置いてんだからお前が責任もって人件費稼いで来い!』

『相変わらず俺には厳しいっすよね。バレンタイン以来テーブルなんて回ってないんで吐かす時間は下さいね!』

『おう!わかったから早く行け!一樹がヘルプだ』

『了解しました。頑張ってきます』

2番と5番か。2番テーブルのあの娘名前なんだったかな?バレンタイン以来だから忘れたよ。

『こんばんは。お待たせしちゃってごめんね!』

『慶太郎!待ってたよ!誕生日おめでとう!里奈!ちょー楽しみにしてたんだからね!』

『里奈ちゃんごめんね。毎年俺の誕生日覚えててくれてありがとう!嬉しいよ。隣いいかな?』

『当たり前じゃん!1本あけてお祝いしよう!慶太郎!はい!誕生日プレゼント!』

『あーありがとう。でも無理しなくていいよ。里奈ちゃん。二十歳になったんだよね?なんかちょっと見ないうちにまた綺麗になった?』

『嘘ばっか!本当だったらちょー嬉しいんだけど。里奈も大人の色気が出てきたかな?これあけて乾杯しようよ!慶太郎!』

『うん。ありがとう。一樹!これを1本持ってきてもらっていい?』

『はい。すぐにお持ち致します!』

『慶太郎!誕生日!おめでとう!かんぱーい!』

『ありがとう!里奈ちゃん。俺嬉しいよ。プレゼントも無理して高い時計買ってくれたんでしょ?ごめんね。ありがとう!』

『無理するよ!普通するでしょ!慶太郎の誕生日だよ!一樹も飲みなよ!慶太郎のお祝いなんだから!』

『はい!ありがとうございます!いただきます!』

『里奈ちゃん!ごめん!ちょっと待っててくれる?』

『うん!いいよ!慶太郎は忙しいもんね!』

『ユキヤ!このプレゼントを奥へしまっといて!次は5番だよね?』

『はい!わかりました!5番テーブルはキャバ嬢の美咲さんです』

『了解!ユキヤありがとう。助かった』

美咲さんは俺より年上だな。まあ基本里奈以外年下客なんていなかった気がする。

『こんばんは。美咲さん。ご無沙汰してます。お隣りよろしいですか?』

『慶ちゃん!久しぶり!もちろんどうぞ!待ってたんだから!慶ちゃん!お誕生日おめでとう!』

『はい!ありがとうございます。美咲さんはお仕事大丈夫だったんですか?』

『休み取るに決まってるじゃん!慶ちゃんの誕生日なんだから!1本あけようよ!乾杯しよう!』

『はい。すいません。ありがとうございます。いただきます。ユキヤ!これを1本お願いします』

『はい!すぐにお持ちします!』

『慶ちゃん!22歳の誕生日おめでとう!今年も慶ちゃんに会えて良かった!あっ!はい!プレゼント!いっぱい貰ってるだろうけどね』

『いやそんなに俺は貰えるような男じゃないですよ。美咲さんみたいな綺麗な女性から頂けるのは嬉しいですね。ありがとうございます』

『またまたそんな嘘ばっかり言う!ナンバーワンホストが何言ってんのよ!慶ちゃん!おめでとう!乾杯!』

『俺はもう現役からは退いて元ホストって感じですからそれなのにこうやってまだ通ってくれる美咲さんに感謝しかないですよ』

『失礼します!慶太郎さん!1番テーブルお願いします!』

『美咲さん!すいません!ちょっと待ってて頂けますか?』

『うん!大丈夫だよ!慶ちゃん忙しいんでしょ!ユキヤと飲んで待ってるね!』

『すいません。すぐ戻ります。リク!このプレゼントをしまっておいて。んで1番だね?』

『はい!そうです!』

はあ?1番って誰だ?俺の客じゃねーだろ?見覚えねーぞ。まさか大輔の奴初来店を俺に押し付ける気かよ?

『こんばんは。慶太郎と申します。お隣りよろしいでしょうか?』

『えぇ。どうぞ』

『失礼します。お名前をお聞きしてもよろしいですか?』

『美香子よ。慶太郎くん?だったわよね。このシャンパンを1本貰おうかしら』

『はい!ありがとうございます。リク!こちらを1本お願いします!』

『はい。かしこまりました』

『美香子さんはこういうお店は初めていらっしゃるんですかね?』

『ここのお店は初めてだけど何度か暇つぶしに違うお店には行ったことがあるわよ』

『そうなんですか。気にいって頂けると嬉しいんですが。美香子さんがたまたまご来店して頂いた日ですが俺も今日たまたま誕生日なんですよ。神様からの誕生日プレゼントですかね。こんな偶然は。では美香子さんおつぎさせて頂きます』

『あら!私も今日誕生日なのよ!本当に偶然ね!七夕が誕生日だって言うのに私の彦星はどこへやら?だから暇つぶしに来たの!』

『本当ですか?お誕生日おめでとうございます。初めてお会いする美香子さんの誕生日にお会い出来るとはやっぱり俺は素晴らしい誕生日プレゼントを貰った気分です!美香子さんの彦星はきっと迷子なんでしょうね。美しい織姫がここにいるのに。でも美香子さんの彦星が迷子になってくれたおかげで俺は美香子の誕生日を祝えるんで迷子の彦星さんには感謝しますけどね。では美香子さんの誕生日を祝って乾杯しましょう』

『慶太郎くん!貴方も誕生日なんでしょ。おめでとう!乾杯!私、プレゼント用意してないから後で贈らせて頂くわね!』

『いえ結構ですよ。俺だって美香子さんの誕生日プレゼントを用意出来てないんですから。この出逢いがプレゼントって事で充分ですよ!』

『ホストが何言ってるのよ。貢がれるのも仕事のうちでしょ。慶太郎くんは時計なんかはいっぱい貰って困るぐらいなんだろうから私は車を贈らせて頂くわ!車を贈る人はそんなにいないでしょ?何に乗りたい?遠慮はしなくてもいいわよ。私はこれでも会社をやってるの。慶太郎くんにはそうね。フェラーリはどう?』

『いえそんな高級な車を頂くわけにはいきませんよ。時計で充分嬉しいですしね!』

『だから遠慮する必要はないの!受け取るのも仕事でしょ?今は何に乗ってるの?フェラーリじゃ同じになっちゃうの?』

『いえ乗ってないですよ。今はBMWに乗らせて頂いてますから』

『じゃあ決まりね。慶太郎くんには似合うと思うわよ。受け取りなさいね。それも仕事のうちなんだから!』

『はい。すいません。ありがとうございます。そんな高級なものを頂いて俺はどうやってお返しをしたらよろしいですか?』

『そうね?私は会社をやってる分忙しいのよ。だから私の時間に合わせて慶太郎くんがつきあって飲んでくれたらそれでいいわよ!』

『はい。わかりました。喜んでお付き合いさせて頂きます。ありがとうございました!またのご来店お待ちしております。ご連絡頂いたらお時間合わさせて頂きますのでまたお会いしてプレゼントの御礼を言わせて下さいね!どうぞ。ではお気をつけて』

『ありがとう!慶太郎くん!わざわざタクシーまで捕まえてくれて。素敵な誕生日の夜になったわ。あまりめでたい歳でもないんだけどね。また会いましょう!』

『俺もです。素敵な夜をありがとうございます。またお会いできる日を楽しみにしています!ありがとうございました!』

んぁーもうダメだ!吐く。くっそ!大輔。俺はもう新規の客はいらねーよ。詩音に回せよ。まだ22時ですか。今で180万ぐらいいったんじゃねーのか?まだママの相手もあるし一旦吐き出しておかないと無理だな。あと何人俺の客が来るんだっけ?とりあえず休憩。