ブラザーズ~青い空へ~

よし5終わり。あと6か。今日俺は店に出なきゃいけないんだからね。俺に頼らず回してくれよ。まあ金曜だから物流多いし早番の社員が1人休みだからしょうがないかもしれないけど。あー電話か。大輔くんね。

『もしもし?大輔?お疲れ!』

『もしもし?慶太郎?お疲れ!なに?ピーピーうるせーんだけど』

『あー俺現場出てましてリフト操りながら電話してますからね。昼飯もまだって言う忙しさですよ。まあちょっと周りが騒がしいですが気にせずどうぞ。どうしました?』

『お前さー使えない人間をいつまでも置いてるから自分がしんどい思いをするんだろ。お人好しもたいがいにしとけよ。仕事なんだぞ。世の中には出来ない人間、向き不向きってのがあるんだよ。ボランティアじゃねーんだよ』

『はい。わかってます。参考にさせて頂きます!俺が現場に縛りつけられてたら大輔にも迷惑がかかるって事もわかってるんすよ。もうちょっと我慢してくださいよ!すいません。俺が殴られますから』

『お前ほんとボコボコだぞ!参考にする気もねーくせに適当な事言うんじゃねーよ!俺はお前の体を心配してやってるんだ!』

『はい。すいません。ありがとうございます。でもごめん大輔。俺はやる気がないなら問題外っすけどやる気があるなら長い目でみたいっすよ。大輔に甘えて本当にごめん。大輔だから俺は甘えられるんだけどね。んでどうしました?店はちゃんと行きますよ!』

『ママから誕生日プレゼントの車が届いたぞ。しっかり礼を言うように!』

『またですか。ありがたいっすね。しっかり御礼を言いに行ってきます!』

『今日来るからママのお相手をすればいいんだよ。車が店にあるから代行使って持って帰れよ。邪魔だ!20時までに来い!時間を守るのは常識だろ。今日はガッツリ稼いでもらうぞ!お疲れ!』

『はい!わかりました!頑張ります!お疲れ!大輔!』

はぁー。しんどい。終わった。大輔ごめん。お前にもしんどい思いをさせてるよな。俺がいなくても現場が回るようにならないと話しにならねーんだよね。全体会議しなきゃいけないかな。勤務時間がバラバラだからと思って個別に注意をしているんだけどちょっと締める時には締めとかなきゃな。ミスも目立つしね。会議するなら夜中しかないんだぞ。みんなしんどいだろ。俺だってしんどいよ。極力避けてあまりしなかったけどしなきゃいけない時期ですかね


『藤井くん!俺終わったけど終わる?』

『はい!もう10分あれば片づきます!』

『じゃあ俺事務所に戻るけど15時便しっかり出発させてね。今日は俺店だからいないもんだと思って回してくれなきゃ困るよ!来週の土曜会議するから!社員全員ね!伝えておいてよ。ミスも目立ってきてるしちょっと気が抜けすぎてるんじゃないかな。あと頼んだよ!よろしくね!』

『はい!わかりました!ありがとうございます!お疲れ様です!』

あー腹減ったよ。14時35分。千佳の弁当食ってデスクワークだな。20時に店か。19時には出ないと遅刻したら殴られますね。

『中井さん!お疲れ!俺飯食うからお茶入れてくれる?』

『お疲れさまです!すぐ入れます!あーあと社長!バイトの募集をしてますかって連絡があったんですけど17歳なんですよ。折り返し連絡しますと伝えているんですけどどうされますか?』

『17歳か。高校生?土日だけかな?まあ面接いつ来れるのか聞いてくれる?』

『はい!でも平日フルで入れるそうですよ』

『あーそう。中退でもしたのかな。まあ1度面接するよ。俺はとりあえず飯食います』

『はい!わかりました!連絡してみます』

迷える少年ですかね。あー疲れた。俺今日絶対潰れるわ。ママからまた車のプレゼントか。まだ1年しか乗ってないんですけどね。またBMWだろうな。新型ですかね。慎二郎のワーゲンが今年車検だから俺が今乗ってるのを慎二郎に乗せよう。ワーゲンは売りだな。

『社長!すいません!面接30分後に来れるそうですがどうしますか?』

『早ッ!近いのかな?じゃあ来てもらって!』

『はい!わかりました』

『もしもし?千佳?大丈夫?問題ない?』

『もしもし?慶太郎?うん!大丈夫だよ!午前中買い物も行ってきたし料理は順調で悠ちゃん達のおやつにはプリン作ったんだけど食べてくれるかな?もうすぐ龍ちゃんと虎ちゃんは帰ってくると思うんだけどね』

『そう。ありがとう千佳!プリンは3人共好きなはずですよ。悠は俺に似てチョコが苦手みたいですけど。おやつまで手作りしてもらってあいつらには市販のものより手作りの温もりを感じられる子になってもらいたいよ。感謝を覚えてもらわないと困るね。手作りのおやつが食えるのは当たり前の事じゃないんだから。俺なんか一度も食った事ないな。あー千佳!今から昼飯なんだ。千佳の弁当を感謝していただきます。いつもありがとうございます。また店に出るまえに連絡入れるよ。このあとちょっと面接入ったから。じゃあチビ達帰ってきたらよろしくね。虎にあまり遠くへ遊びに行かないように言って下さい。お願いします』

『うん!わかった。こっちは大丈夫だよ。慶太郎くん!しっかり残さず食べてね!バランス考えて作ってるんだから。お仕事頑張って!』

『わかってますよ。いつも残さず食ってるじゃないっすか。ありがとう千佳。じゃあよろしく!』

『うん!わかった!』

30分後に迷える少年の面接だな。長田部長に会議後押し付けられた仕事があるんだよな。新しい現場の話しも出てるし接待もしなきゃいけないけどまだ受けたくないと言うより俺の手が回りませんよ。俺は10月に3店舗目のオープンも抱えてますからね。大輔に3つも面倒見させるって俺も鬼だな。そりゃ殴られるわ。店の改装が来月終わるんだよな。求人募集もかけなきゃいけないし新現場は無理でしょ。今の現場が俺をアテにしてるようじゃまだまだ受けられないですよ。

『社長!面接の方がいらっしゃいました。応接室にお待ち頂いてます』

『はい!すぐ行きます』

早ッ!まだ飯食ってねーよ。そんなに焦って仕事探しているのか?

『はい。こんにちは!どうぞ。座って』

『はい。よろしくお願いします!』

『履歴書は持ってきた?見せてもらっていい?』

『はい!持ってきました!』

『森井涼太君17歳か。6月に17歳になったばっかりなんだね。高校2年生で辞めたのかな?なんで学校辞めたの?』

『え?つまんないからです』

『つまんないからか。なんで働きたいの?学校辞めたんだったら親に働けって言われた?』

『いや言われてないっす。俺が家を出たいからです』

『なんで出たいの?家にいれば食う寝るには困らないでしょ?勉強は嫌い?』

『はい!勉強はわからないしやりたくないっす。親は俺の事をウザイと思ってるくせに言わないだけで会話なんてないっす。俺もウザイんで早く働いて家を出たいっす』

『ウザイと思ってるのかどうかはわからないけど心配はしているんじゃないかな?これからどうするんだろう?ってね。んでバイト経験なしか。いつから来れるの?』

『え?いつって?いいんすか?』

『働きたいんだろ?違うのかよ!』

『いや働きたいっす!だって高校中退だからどこもダメだって言われたしどうせダメなんだろうと思ってました』

『だからいつから来れるんだよ。言っとくけど重い荷物もあるし体力仕事だからしんどいよ。やれるかどうかはお前にやる気があればやれるよ!これから夏本番は普段に増してしんどいけどね。倉庫の中は蒸し風呂みたいに暑いし体力仕事で大変だよ。まあ若いし大丈夫だろ?』

『はい!頑張ります!月曜からでもいいっすか?』

『うん。いいよ。休みは土日?時間は何時から来たいの?』

『お金がいるんで休みは日曜だけでいいっす!時間は長く働きたいっす』

『だから何時から来るんだよ!朝から来れるの?』

『はい!10時からとか大丈夫っすか?』

『10時ね。いいよ。じゃあ10時から18時が基本ね。1時間の飯休憩があるから。残業が普通にあると思うけど出来る?1時間ぐらいはしてもらうと思うよ。もちろん残業代はつくからね』

『はい!大丈夫っす!』

『家も近くだからチャリか。じゃあ月曜日の9時45分までにここの事務所に来てくれる?俺は仕事の覚えが悪い云々は長い目で見るけど遅刻だけは許さないよ。社会に出れば当然だけどね。それにうちは時間に追われる仕事だから尚更遅刻は困る!毎日ちゃんと10時までに来れるんだな?』

『はい!10時だったらたぶん起きれます!』

『たぶんてなんだよ!たぶんじゃ困るんだよ!遅刻したら俺から殴られると思っとけ!』

『はい!わかりました!ありがとうございます!』

『涼太!俺もお前と同じ歳ぐらいの時に高校中退したよ。でもここまでになった。俺は今ここの会社の社長をやってる。中退したからダメって事はないよ。お前の努力次第だ!月曜待ってるぞ!頑張ろうな!』

『はい!頑張ります!ありがとうございました!』

あーめんどくさいの拾ったな。まあこれも俺の償いの1つです。こんな事で俺の罪が許されるとは思ってないですけどね。壮ちゃんに怒られる覚悟はとっくに出来てるから。説教とお仕置きはもうちょっと待っててね。17歳か。1年もてばなんとかしてやれるんだけどな。頑張れ!涼太。遅刻だけはするなよ。どこへ行っても同じだよ。よし飯食って仕事しよう。