ブラザーズ~青い空へ~

『龍!虎!そろそろ帰ろうか!スーパーにも寄らないといけないしね。玉ねぎ買いたくないけど』

『慶太郎兄ちゃん!おやつ買ってー!』

『僕も欲しいー!』

『1つだけだからね。でもご飯をちゃんと食べてからおやつを食べるんだよ!』

『はーい!』

ご飯のあとも何もおやつなんて小さなガムが1個しか入ってないもはやおもちゃがメインじゃねーかよ。またガラクタが増えただけだな。どうせ数時間で飽きるんだろ。

『あっ!ここ悠兄が練習してるとこだよ!見よう!』

『そうなの?ここでやってんだ。俺は何にも知らないな』

『あっ!悠兄がいた!なんで悠兄お尻叩かれてるの?』

『さあね。気合い入れられてんじゃないの?』

『気合いって何?』

『もっと真剣に集中して練習しなさいって怒られてるんじゃないのか?さあ悠ももうすぐ終わるんだろうし帰ろう』

『うん!あっ!おもちゃが落ちたー!』

『だから家で開けなさいって言っただろ。自分で落としたんだから虎が悪いんだししょうがないでしょ。帰るよ!』

『やーだ!もう1回買う!』

『1つしか買わないって言っただろ。もう買わない!帰るよ!早く来なさい!怒るぞ!』

『いやー!うわあーん、ほしーい、うぇーん、ほしー!ほしい!龍だけ持ってる!やだー!うわーん、買ってー、あーん、うわー!』

『虎!いい加減にしなさい!自分の不注意で落として壊れたんだからしょうがないだろ!お家に帰ってから開けなさいって言ったのにそれも聞かなかったのはお前だろ!言う事聞かないからそういう事になるの!早く来なさい!帰るよ!もうお仕置きだな!龍!おいで!帰ろう!』

座り込んでラチあかないなら強制的に連行するしかないよね。ここから家まで泣き喚く虎を抱えて歩きだぞ。車で来ればよかったな。悠は竹刀で尻を叩かれてるわけか。もうすでに竹刀を食らってるならいくら尻を出されてるとしても俺の手なんてたいした事ないだろうな。あいつのお仕置きはもう竹刀だね。さすがに尻を出してはきついだろうからズボンの上からで勘弁してやるけど俺なんて本当に尻丸出しで叩かれてたんだからな。あれは本当に痛かったよ。壮ちゃん特製のお仕置き棒は壮ちゃんの形見として俺が今でも持っている。1番最初に使うのは悠だろうね。お前が中学になって俺みたいな悪さしたらお前にも泣いてもらうぞ。

『っく、うっく、痛い、痛いよー、ごめんなさい、っく、うわぁーん』

『そりゃ痛いよ。お仕置きなんだから。虎はわがままばっかり言ってちゃダメだ!言う事聞かないで勝手にあけて壊しちゃったからまた買ってくれって自分がわがまま言ってるのをわかってるの?』

『っく、うっく、わ、わかってるの。っく、でも、ほしい、っく、り、龍だけ持ってる、うっく、っく、ひっく、ちゃんとお家であけるから、うっく、っく』

『わかってるのって言うわりには我慢はしないのか。もう本当に最後だからね。次壊れたからって言っても買わないよ!わかったの?』

『っく、うっく、わ、わかった!っく』

『じゃあ行くよ!早く車に乗って!お昼ごはんになっちゃうじゃん!千佳!ちょっとだけ出て来るから龍を頼むね!すぐ帰ってくるから!』

『うん!わかった!もうすぐご飯だからね!』

『うん!すぐ帰るよ!はい!虎!シートベルトして。もう泣かないの!今から買いに行くから』

『っく、うん!』

はぁー。甘いよな。いくらお仕置きはしたとは言え結局買い与えたら意味ないんだろうね。でも双子で片方は持ってて自分がないのは嫌だろうし。お義母さんごめん。虎に泣かれると俺もつい甘くなるよ。反省します。やっぱり虎は俺に似てるかも?悠と虎は俺に似てるから気をつけないとね。龍は慎二郎似かな。

『おう!悠!帰ってたのか?おかえり!』

『うん!さっき帰ってきたとこ。ただいま!』

『今日の練習はどうだったんですか?』

『何が?別に普通だけど。いつもと変わらないよ』

『夜ふかしして気合い足りなかったんじゃないの?』

『そんなわけないじゃん。いつも通りだよ』

『んじゃなんで尻叩かれてたのかな?俺の手じゃ効いてないだろ?いつから竹刀食らってるんだ?』

『効いてるよ!充分いてーよ!尻出してないし2、3発ぐらいのもんしか食らった事ない!』

『じゃあ俺からは20発から30発は食らうと思っておけよ!お仕置きされるような事をしなければいいだけだろ?』

『マジ?尻だして?それは無理だよ!』

『どうだろうね。お前がしでかす事によりますよ。さあ飯食うぞ!』

『マジかよー』

『はい!龍!虎!ちゃんと座って!おもちゃは置いときなさい!作ってくれたお姉ちゃんに感謝していただきます!』

『いただきまーす!』

『ただいまー!兄貴!車戻して置きましたんでって。あっ!お客さん?こんにちは!』

『おう。おかえり。釣れなかったのか?俺の奥さんの千佳。俺の子供が生まれるんだ。もちろん悠達の面倒もこれから見てくれるよ。よろしくな』

『慎二郎くんだよね?千佳です。よろしくお願いします』

『あーはい。二男の慎二郎です。こちらこそよろしくお願いします!弟達がお世話になります!』

『私一人っ子だったしこんなにかわいい子達と大勢でご飯一緒に食べたり出来るの嬉しいんだよね。それに勉強になるよ!慎二郎くんはご飯食べた?一緒に食べない?』

『いいんすか?いただきます!何?このめっちゃ豪華な食事は!お前らこんなの毎日食えるわけ?俺なんて学食かコンビニだぞ!贅沢な』

『慎兄がムダ使いしてるからでしょ?』

『うるせーな!悠之心!お前最近ちょっと生意気になってきたよな?』

『そう?別に変わらないと思うけど』

『慎二郎兄ちゃん!遊んで!』

『おう!龍!虎!数ヶ月見ないうちにちょっと大きくなった?ご飯食ったら遊ぼうな!』

『うん!』

『慎二郎!お前明日の予定は?明日は悠達のカットが終わったらどっか連れて行こうかと思うんだけどお前も時間あるなら付き合えよ!』

『付き合いますよ!俺もついでにカット代出してもらっていいっすか?千佳さん!めっちゃうまいっす!おかわりお願いします!朝飯食ってないんで腹減ってたんすよ!』

『そうなの?いっぱい食べてくれたら嬉しいよ!ちょっと待ってね!』

『お前まさかもうお小遣いがないとか言うんじゃないだろうな?』

『さすが兄貴!ガソリン代痛かったっす!入ってなかったじゃないっすか!て事なんでカットとあとお小遣いを少々頂けると助かります!』

『お前には生活費とは別に充分なお小遣いを渡してるはずなんですけどね。家賃や光熱費だって俺の口座から引かれてるんだ。もうちょっと考えて使いなさいよ!』

『はい!わかってます!すいません。んで明日どこ行くんすか?』

『悠!龍!虎!どこ行きたい?水族館?動物園?遊園地?髪カットしてたら昼からになっちゃうけどね』

『僕!遊園地がいい!』

『僕も遊園地!』

『遊園地か。悠は遊園地でいいの?』

『どこでもいいよ。俺は髪をかっこよくきれたらいい!』

『あーそう。じゃあチビ達のご希望に合わせて遊園地にするか。あー慎二郎!お前暇なんだろ?今日!カット行ってこいよ!』

『えっ?チビ3人も連れて!?俺、寝てねーから飯食ったら寝ようかと思ってたんすけど』

『たまになんだから面倒見ろ!予約は俺が入れとくし午後から連れて行ってこい。お前お小遣いいらないのか?』

『いえ。喜んで連れて行かせて頂きます!俺カラー入れたかったんすけどね。チビ連れては無理っすね。カットだけで我慢しますよ』

『悠!龍!虎!昼から慎二郎とかっこよく髪切って貰っておいでよ!そしたら明日朝から遊園地に行けるからね!』

『わかった!』

『僕もまたかっこよくする!』

『俺もカラー入れてみたい』

『ダメだ!高校卒業するまでは禁止!わかったか?悠!』

『わかったよ!明日ランドがいいな』

『わかった。じゃあ早く起きようね』

『なんだよ!悠之心!お前デートの下見でもするつもりか?まああと5年ははえーだろ』

『はあ?慎兄!俺らもう彼女いる奴とか普通にいるよ!俺だっているし』

『嘘?マジ!?小5のくせに生意気な!』

『悠!彼女がいるのはいいけどお前も門限は夕飯までだよ。まだ小学生なんだからね。18時までに帰ってきなさいよ!女の子にだって早く帰してあげる配慮をしてあげなさい』

『わかってるよ。でも一緒に学校から帰ったりとかするぐらいだしデートって言ってもたまに土曜の昼から校区内のしょぼいゲーセン行ってプリ撮るとかそんな程度だよ。お小遣いだって俺少ないしあまり遠くに遊びに行けない』

『お前のお小遣いは少ないのか?平均千円ぐらいだって保護者会で聞いたぞ。それなのに俺は5千円をお前に渡していた。だからっていきなり4千円下げるのは大きいだろうから3千円にしている。それでも平均より2千円多いんだけど悠は少ないと思うのか?』

『だって俺お父さんから一万貰ってたしそれが半分になってさらに2千円引かれたんだよ。どう考えたって少ないじゃん!』

『だから俺らみんなそうだったけど親父がおかしいんだ!学校でお小遣いの平均を調べる事も知ろうともしなかったからな。だいたいお前は何に使うんだよ。服だって必要な物は俺が買ってるし他に必要なものがあるなら言いなさいって言ってるだろ。俺ん家はおかしかったんだ。だから俺がおかしいだろ?お前らにはまともな金銭感覚を身につけておしい。龍と虎はまだお金をもらってなかったから良かったよ。でもなんでも買ってもらえて当たり前だと思ってるけどな。悠は自分のお小遣いの中で考えて使いなさい。俺みたいになるんじゃない』

『わかったよ!』

『慎二郎!お前もだぞ!お前ももう今更かも知れないけど自分で働いて得た金じゃないんだからな!』

『はい!すいません!以後気をつけます』

悠!俺達はガキのくせにお金を持ち過ぎていたんだよ。現金を持ちすぎる必要はないんだ。ご飯だって家に帰れば食べられるし必要な物は俺が買う。お前はまだ間に合うよ。だから普通の感覚を身につけてくれ。俺は持て余した金でロクな事をしなかったからな。金では満たされないんだよ。俺だっていまだに普通がわからないんだからお前達に与え過ぎているんだろう。当たり前じゃないって事がわかってくれるようになればそれでいいんだけどね。

『じゃあ俺は仕事行くよ!慎二郎!14時30分に強の美容院に予約入れたから連れて行ってくれよ!』

『了解しました!カット代は?』

『2万あれば足りるだろ?チビ達のカットが3800円だったかな?お前が7000円ぐらいだろ?』

『えーマジ!ちょーギリじゃないっすか!チビ達になんかねだられても俺買えないっすよ!もう千円しか持ってないっすもん』

『余計な物は買わなくていいんだよ!俺が充分って程買ってしまってるんだからな。まあとりあえず3万渡しておくよ。何かあったら困るから。お小遣いは今日ちゃんと面倒見たら明日渡してやる!』

『はい!ありがとうございます!しっかり面倒見させてもらいます!』

『じゃあ頼むよ!エルグランドで行けよ!チビ達乗せるんだから気をつけろ!』

『はい!了解っす!』

『千佳!じゃあ仕事行ってくるね。今日は土曜だから忙しくないとは思うけど店に行くなら遅くなるし時間はわかんないね。チビ達よろしく!まあ慎二郎が今日はいるから大丈夫だとは思うけど。行ってきます』

『うん!わかった!行ってらっしゃい!慶太郎!』

会議の資料を今日中に作ってしまわないとね。悠に彼女か。俺よりはえーじゃねーかよ。まあ俺がお前の時ぐらいには受験勉強一色の生活でしたからね。猛勉強してましたよ。合格だけが俺の唯一の希望だった。その希望が間違っているとは思いもせずにただ必死に勉強に打ち込んでいたよ。希望が一瞬にして絶望に変わったんだけどな。人生ってなんなんだろう。壮ちゃん!俺はまだお母さんに愛されなかった理由が見つけられないでいるよ。いまだにわからない。この答えを見つける事が俺に出来るのかな。