ブラザーズ~青い空へ~

『おはよう千佳。早いね。眠れた?』

『おはよう!慶太郎!どこに何があるかわからないし朝ごはんの準備に時間かかったらいけないと思って早く起きたって言うのもあるし緊張しちゃって眠れなかったよ』

『そう。まあそのうち慣れるよ。それにあまり気負う必要ないしね。千佳!コーヒー欲しいんだけどわかる?』

『うん!これだよね?すぐ入れるよ』

『ありがとう。あと家政婦を雇おうと思ってるからどれくらい来てほしい?週5でいい?』

『え?なんで?私がいるじゃん。私じゃ頼りないの?』

『いやいやそんなんじゃないですよ。だって千佳のお腹には俺達の大事な子がいるし千佳に無理してほしくないから朝ごはんぐらいで後は家政婦の人に家事はお願いしようと思ってるだけですよ。チビ達の面倒も見てたら大変だし心配なんでね』

『慶太郎くん!妊娠は病気じゃないしみんな家事や育児をこなしてるの。普通の事なんだよ!そんな楽した環境にいる人なんて稀じゃない!私は主婦でしょ?家事も育児も出来るの!もちろん慶太郎の大事な弟達の面倒だって私が全力でみるよ!だから勝手な事をしないでよ!そんな贅沢な暮らしは私には必要ないよ!』

『あーはい。いや俺は無事生まれるまで心配だし龍や虎は本当に手がかかるんだよ?千佳に無理してほしくないと思っただけなんですけどね』

『気持ちだけで充分だよ。ありがとう!慶太郎!でも私は自分でやりたいの!だから大丈夫だよ!』

『わかりました。俺タバコを書斎で吸ってシャワー浴びてくるよ』

『うん!わかった!コーヒー持っていくよ!』

『いやもらっていくよ。俺はタバコを書斎でしか吸わないけど千佳のお腹には赤ちゃんいるからタバコの煙は悪いでしょ?だからチビ達の前でも俺は吸わないようにしてるから』

『そこまで考えてくれるのは嬉しいけどいっそのこと慶太郎くんの体の為にも辞めてくれたらもっと嬉しいんですけどね』

『あーはい。そうですね。考えておきます。コーヒーありがとう!』

千佳がこの家のボスになるのはそう遠くないな。子供が出来ると女って強くなるのか?

『悠!起きろ!朝だよ!剣道行くんだろ?』

『あーおはよう。慶兄。眠い』

『何時に寝たんだよ?』

『たぶん23時前ぐらいだよ。ゲームしてたら遅くなっちゃった。いったぁー!なに?』

『チビ達は21時消灯にしてるけどお前の時間決めてなかったな。お前はまだ小学生なんだから遅くても22時までに寝なさい!時間守らなかったら次回からお仕置きな!わかったか?』

『わかったよ!頭叩かないでよ!いってー』

『それから悠に大事な話しがあるんだ。俺が付き合ってた彼女に子供が出来て今日から一緒に住む事になったから。お前達のご飯の用意や掃除もしてくれる。嫌か?』

『え?別に嫌じゃないしそれは助かるけどいいの?俺達がいて?』

『何言ってんだ!バカ!俺はお前達が大人になるまでちゃんと育てるって言ったし俺にとってお前らは大切な存在なんだよ。むしろお前らが俺の子を弟みたいに見てくれたら嬉しいよ。お前らは叔父さんになるんだけどな』

『うん!わかった!ありがとう慶兄!』

『朝ごはん準備してくれてるよ。早く顔洗って着替えてこいよ』

『うん!わかった!』

『龍!虎!起きて!朝だよ!虎!』

『おはよう!慶太郎兄ちゃん!抱っこして!』

『はい。おいで!龍!おはよう!あのね、龍にお話しがあるんだけど今日からお姉ちゃんが一緒に暮らす事になって龍達のご飯を作ってくれたり色々面倒見てくれるけど仲良くしてくれる?』

『お姉ちゃんがご飯毎日作ってくれるの?』

『うん!そうだよ。お姉ちゃんの言う事をちゃんと聞いて困らせないようにしてくれるかな?』

『うん!わかった!』

『はい!じゃあ顔洗ってきて!着替えもしちゃおうね!昨日買ったのしまっておいたから好きなの着てね!虎!置きて!虎!コラ!起きろ!』

『んー?慶太郎兄ちゃん!抱っこしてー』

『はい。おいで。おはよう!虎!虎にお話しあるんだけど聞いてくれる?』

『うん!いいよー!』

『今日からお姉ちゃんが俺達と一緒に暮らして虎達のご飯やお世話をしてくれるんだけどお姉ちゃんの言う事をちゃんと聞いて困らせないで仲良くしてくれる?お姉ちゃんは俺の大切な人なんだ。嫌かな?』

『いいよ!僕、仲良くする!』

『そう。ありがとう。じゃあ顔洗ってご飯食べよう!お姉ちゃんがご飯作って待ってるよ』

『うん!僕、かっこいい服着る!』

『あーそう。かっこいいのってどれ?全部同じブランドですけどね。昨日買ったやつにする?』

『うん!これ着る!』

『じゃあさっき話したけどこのお姉ちゃんがお前らのご飯を作ってくれたり面倒を見てくれるからね。ちゃんと挨拶して!悠から!』

『悠之心です。よろしくお願いします!』

『龍之助です!お願いします!』

『僕が虎之助だよ!お姉ちゃん!僕かっこいい?』

『うん!かっこいいね!虎ちゃん!よろしくね!千佳です。悠ちゃんも龍ちゃんもよろしくね!悠ちゃん!色々教えてね!』

『あーはい。よろしくお願いします』

『みんなやっぱり慶太郎に似てかっこいいね!男前じゃん!モテるでしょ?』

『悠兄はバレンタインのチョコ3つしか貰ってないよ!僕は幼稚園でいっぱいもらったんだよ!慶太郎兄ちゃんはちょっとしか貰ってないんだって!』

『悪かったな。ちょっとで』

『俺は3つで充分なんだよ。チョコは好きじゃねーから』

『僕だって幼稚園でいっぱいもらったよ!』

『そう!すごいね!やっぱりみんな女の子にモテるんだね!』

『はい!じゃあご飯を作ってくれたお姉ちゃんに感謝していただきます!』

『いただきまーす!』

『うまい!って言うかすげー豪華な朝飯!』

『ほんと?悠ちゃん!ありがとう!』

『悪かったな!悠!俺の朝飯がしょぼくて!俺は料理が苦手なんだよ!』

『お姉ちゃん!スープ美味しい!』

『ありがとう!龍ちゃん?だよね?』

『うん!龍だよ!』

『お姉ちゃん!僕サラダ嫌い!』

『ダメ!虎!出されたものはちゃんと食べなさい!約束だろ!』

『虎ちゃんは野菜が嫌いなの?』

『うん。嫌い!まずいもん!』

『虎!食べなさい!アレルギーでもなんでもないんだから出されたものは食べるって約束しただろ!今日は昨日からずっとわがまま言ってるしお尻いっぱい叩こうか?』

『い、いやだ!食べる!』

『はい。じゃあ頑張って食べて!』

『慶太郎くん!慶太郎くんもしっかり食べてね!』

『なんすかね?もちろん食べますよ!』

まぁ。なんとか悠達も懐いてくれそうだな。千佳は保育士だったし子供には慣れてるか。

『慶兄!俺、剣道の練習行ってくる』

『おう。行ってらっしゃい。俺は昼から仕事行くからね。千佳に色々教えてあげて』

『うん!わかった。行ってきまーす!』

あー仕事が終わらねー。明日は日曜だからどっか連れて行かなきゃいけないんだよな。悠は髪カットしたいって言ってたっけ。龍と虎もついでにカットしてもらってどこへ遊びに連れて行くかだよね。先週は映画見せたし釣りは龍と虎にはまだ無理かな。すぐ飽きそうだ。波乗り教えてやりたいけど朝早く出なきゃ無理だから髪カットしてたらダメだな。水族館か動物園が無難ですかね。

『慶太郎兄ちゃん!遊ぼう!』

『はいはい!公園行こうか?』

『うん!行く!』

『龍は?何してんの?』

『えー知らない!早く!サッカーボール持って行こう!』

『じゃあちょっと待って!龍も呼んでくるからね!龍!入るよ!勉強してんの?宿題?』

『違うよ。宿題は終わったからお母さんが買ってくれたドリルやってるの』

『そう。えらいね!虎が公園に行こうって言ってるから龍も一緒に行かない?』

『うん!行く!』

『千佳!チビ達連れて公園行ってくるよ!』

『うん!わかった!お昼用意しておくね!』

『あーなんか買うものあるならスーパー行ってこようか?まとめ買いはしてるけど足りない物はない?』

『んーそうだね。たまねぎがないかな。ないかなって言うより元々買ってないんじゃないの?慶太郎くんの大好物だもんね』

『嫌味ですか?買ってなくはないと思いますけどね。何度かは買ってますよ。悠がカレー作ったんで使ったんじゃないんすかね。玉ねぎ買ってきますよ!それだけですか?まあなんかあるなら連絡下さい。昼飯には必要ないものでお願いしますね』

『わかりました!あるものでやります!』

『はい。お願いします!龍!虎!行くよ!』

『はーい!どれ履けばいいの?』

『どれでもいいよ。もう小さくなったのは捨てよう。どんだけ履けるものがあるのか把握できないよ。ブーツは履けないだろ?今年の冬はもう無理だろうな?』

『ちょっと待って!慶太郎!なんでもかんでも捨てないでよ!新しいやつはバザーとかに出せるじゃん。生まれてくる子にだって履けるかも知れないし』

『買うよ!そんなの。何年も置いててどうすんの!増える一方だよ。流行りも違うだろうし』

『だってもったいないじゃん。それ履いてないんじゃないの?どこか貰ってくれるとこあるよ!捨てるぐらいだったら施設の子に送ってあげた方がいいよ!』

『あーそうだね。服も新品で着れなくなってるのあるし施設の子に送ろう。じゃあ行ってくるね!』

施設か。俺がいた児童相談所は嫌なとこだったな。まあそれだけの事を俺がしたからなんだけど1度も親は面会に来てくれなかった。壮ちゃんは何度も来てくれたな。あの時は壮ちゃんが俺の親だったもんね。だけど俺は一度きりしか会わなかった。壮ちゃんに合わせる顔がなかったんだ。壮ちゃんの哀しい顔を見たくなくて逃げていたんだよ。俺が全部悪いのにね。現実から逃げて夢であってほしいと思ってたぐらいだ。だから反省なんて出来てるはずもなく自分が傷つかないように自分を守るだけで精一杯だった。俺は弱虫だったね。弱さをやっと認める事が出来たと思う。自分の弱さを認めてこそ強くなれるんだと気づいたよ。俺、相変わらず出来が悪いでしょ。でも壮ちゃんはこんな俺を褒めてくれたりもしたね。まあ褒められる事より怒られる事しか俺はしてなかったけど。壮ちゃんはなんで俺なんかの面倒を見てくれたの?壮ちゃんの人生ってなんだったの?壮ちゃんは俺なんかの為に無駄な時間を使って生きたんじゃないかって時々思うんだ。壮ちゃんが俺のベビーシッターとしてやってきたのが26歳で俺は3歳。3年間壮ちゃんが面倒見て俺を育ててくれた。35歳の時にはまた俺を引き取り面倒見てくれたね。そして壮ちゃんは36歳で遠くへ逝ってしまった。壮ちゃん!壮ちゃんが俺と出会ってからの10年で幸せだった時がありますか?俺が壮ちゃんを苦しめた10年間ではなかったんですか?