「……愛美ちゃん」
そっと私の顔を上げる。
先輩は、泣きそうな顔をしていた。
私、また泣いてた?
地面には数粒の水玉模様。
「俺、愛美ちゃんが好きだよ?だから、男の話とかされると余裕なくなるし、キスだって抱きしめるのだって、本当はめちゃめちゃしたい。」
私の頬を両手いっぱいに挟んで、私だけを見つめる先輩。
「嫌われたくなくて、しなかったんだ。したら、前みたいに止まらなくなるから。」
先輩の言ってる前みたいは、多分この間のカラオケでのキスのことだ。
「俺ら、2人して勘違いしてたんだな。」
フッと笑う先輩。
…久しぶりに見た。
大好きな大好きな表情。
「せぇんぱいぃー…」
「わっ」
目がうるうるして、先輩も慌てる。
「好きですぅー。」
「……俺も」
今度はそっと触れる唇。
軽く音を立てて離れていく。

