「歌織、あたしのこと、色々言ってるみたいじゃん。
高校デビューだとか、中学の時、全然目立たなかったくせにとか。

だから、なんなの?
歌織に迷惑かけた?

まじ、目障りなんだけど。今日、
これだけ言いたかったんだよね!」


奈緒子の目の奥には、苛立ちが込められてた。

あの奈緒子がこんな目をするなんて、衝撃だった。


その視線の強さに歌織は、たじろぎ、無意識のうちに「ごめん…」と言ってしまっていた。


本当は、私はそんなこと言ってないよと弁解したかった。


奈緒子がヤンキーになったことは、元同級生達の噂の的だし。


それに歌織からしてみれば、奈緒子が変わっていったのは、夏祭りの後で、奈緒子は「中3の秋からデビュー」だと思っている。


卒業式の後だって、奈緒子は別れの言葉を交わすわけでもなく、校門の外で待っていた恵也先輩の紫色のバイクに跨り、さっさと立ち去ってしまった。


それはそれでなんかかっこよかったけど。

でも、喋れば喋るほど、奈緒子が変わってしまったことが悲しくなり、早くその場から立ち去りたくなった。