「フフッ…」

乱れ髪に涙でぐちゃぐちゃになった化粧の顔で、力なく笑った。


「ここに入る前、ラブホ代貸してって言われて貸した五千円、いつ返して貰えるのかなあ…」





もう終わってしまった恋。


初めての恋だったのに。大切にしていたのに…


あまりにも突然で理不尽な別れを受け入れられなかった。

恵也は人が変わったように奈緒子に冷たくなった。

五千円も諦めるしかなかった。


学校では徹底的に避けられた。

その為に奈緒子は何度も恵也の家に電話したり、校門で待ち伏せしてみたり、
ストーカーめいたことをしてしまった。



そして、恵也がサーフィンを通じて知り合った歳上のサーファー女に恋をして、自分を棄てたと知る。



教えてくれたのは、恵也の弟、尚哉だった。



「坂本と恵也が付き合うきっかけを作っちゃったのは、俺だし」


正義感の強い尚哉は奈緒子を傷付けたまま、知らん顔する自分の兄が許せず、わざわざ、奈緒子の家に電話をしてきた。


『残酷かもしれないけれど、本当の事を知っておいたほうがいいよ。
その方が早く立ち直れると思うんだ』


電話口で尚哉は、諭すような口調で言った。