自分がまだ中学生なのを思い出し、怖くなる。


ここにいることを誰かに咎められたら、どうしよう…

誰かか通報して、警察に補導されたら。


奈緒子が不安でたまらなくなっている時。


「奈緒子ちゃん、だよね。可愛いね!
これ、俺からのプレゼント」


一人の若い男が、グラスに入った飲み物をすっと差し出してきた。


恵也の先輩だ。

なんとなく顔を覚えていた。
恵也は、シロー先輩とか呼んでた気がする。


少し、ホッとしたような気分。


「これ、お酒…?」


奈緒子は上目遣いに訊く。


断ってもいいのか、それとも少しでも口をつけた方が失礼にならないのか。


「酒はメチャ薄いから大丈夫。
酔ったら、俺、介抱するし」


両サイドに金色のメッシュを入れた
ヘアスタイルのその男は、にっこりと
笑った。



奈緒子がグラスを受け取り、一口飲もうとした時。


「先輩。ごっさんです」

恵也が素早く奈緒子からグラスを奪い取り、自分が口を付けた。


「恵也あ、わりぃ。
帰ったのかと思った」


先輩は軽く手を上げ、ニヤニヤしながら、その場を立ち去った。


恵也は怒った口調で奈緒子に言った。

「こんなところで酒なんか飲むなよ。
どっかに連れ込まれてヤラれるぞ!」