「触ってみろよ。固えから」
恵也はボストンバッグを持っていない方の片腕を奈緒子の前に突き出した。
奈緒子はボストンバッグを足元に置き、ためらいなく両手で、恵也の二の腕に触れた。
「あっ!本当、固い!すっご〜い!」
ピョンピョン飛び跳ね、無邪気に声をあげた。
突然、ドサッと大きな音を立てて、恵也が自分のボストンバッグを床に放り出した。
次の瞬間。
恵也は、奈緒子の肩を乱暴にぐいと引き寄せた。
奈緒子の細い体は前のめりに傾く。
「あっ…!」
気がつくと、恵也の腕の中にいた。
「…奈緒子…逢いたかった!」
奈緒子の耳元で囁いた。
奈緒子は後悔した。
…馬鹿だった…
恵也はこの機会を狙っていた。
2人きりになっては、いけないと分かっていたのに…
恵也の張った蜘蛛の巣のような罠に、
いとも簡単に引っかかってしまった。
…なのに、なぜか抗えなかった。
昔、散々抱かれ、馴染んだ恵也の胸。
親からも先生からも見放され、友達とはうわべだけの付き合い。
恵也の腕の中だけが、奈緒子の居場所だった。
振りほどかなくてはならない…
それも分かっているのに、懐かしさと
安堵感で出来なかった。
恵也は、奈緒子の唇に自分の唇を重ねてきた。
奈緒子はそれを受け入れる。
昔と同じく、恵也はすぐに舌を差し込んできた。

