「これ、先輩から買ったばっかの俺の可愛い子ちゃん。名前はパープー号。
言っておくけど、パープーはバカって意味じゃねえから。
パープルの意味。
今日はメットないから乗せてやれないけど、今度乗せてあげるね」


「パープーゴー?」


奈緒子は訊き返す。

音の響きが可笑しくて、思わずクスッと笑ってしまった。


「イカすだろ?」


恵也は得意げな顔をする。


そんな顔をする恵也が可愛い、と奈緒子は思った。

そんなことは歳上の恵也には言えないから、うんうん、というように大きくうなづいて見せた。



さっき笑ったおかげで、氷が溶けるみたいに奈緒子の緊張は半分以下になる。



「奈緒子ちゃんて一コ下だよね。
俺だって去年までおんなじ中学にいたのに、俺のこと、知らない?まじで?
俺、結構悪さしてたけどなあ〜
あーまあ、あそこの校舎、南と東で別れてるし、一コ違うとそんなもんかなあ…」


「はい…」


恵也の事を知らなかったことが悪い気がして、奈緒子は曖昧な笑みを浮かべた。


奈緒子が知ってる一学年上の先輩と言えば、夏休み前までやっていたバドミントン部の女子の先輩達くらいだ。