『さあ…….
一応、いないって言ってますけど。
本当のところはどうなんでしょうね?
奈緒子さん、綺麗な人だから、いろいろ選んでるんじゃないですか?
もう29歳だし、若い男性社員はどんどん結婚していくし。
ゆっくりしてられないと思いますけどね〜』
私の遠回しな言葉の悪意に、藤木さんは全然気がつかない。
『29歳って、やっぱり女の人は色々考えるんだろうね…俺は男だから、とりあえず仕事だけど』
哀愁たっぷりに視線を落として、そんなことを呟く。
目の前に置いたバーボンの水割りのグラスのふちに、しなやかな二本の指を軽く掛けてひと口啜った。
ああ…私は……
目が離せなくなる。
その仕草が……
その唇が……
とてもセクシー。
悩殺されるぅ……
モスコミュールを飲むのも忘れて、私は、ぼおっと見入ってしまっていた。
でも、藤木さんは、
『広島に彼女がいる』ってあっさり告白した。
がっかり!
…でも、いっか。
ワンナイトラブでも。
私、口固いよ。
なんてね…
そのバーは横浜ガイドウォーカーで調べて、初めてきた店だったんだけど、すごく雰囲気が良くて最高だった。
山下公園の夜景は綺麗だし。
藤木さんはいい男だし。
だから私は、少し酔ってしまった。
いい気持ちになってしまい、つい最後の方で口をすべらせた。

