Breathless Kiss〜ブレスレス・キス



こないだなんて、私がつけてた香水、
『サワデーの新緑の匂いがする〜』とかほざいてた!


一瞬、体がカクンとなって受付のカウンターに頭、ぶつけそうになった。


失礼なやつ……!
シャネル「ココマドモアゼル」が、どうして芳香剤になるわけ?


でも、喧嘩する気なんてない。


藤木さんのことを思えば、元同級生の奈緒子は、攻略の『良いアイテム』になるかもしれないし……と考え、私は大人になってやった。


(フーンだ!奈緒子さんの昔ながらの
石鹸の香り、ラブホ帰りの匂いには負けますよ〜!)


心の中で毒づいた。







そして、待ちに待った
藤木さんと初デートの金曜日の夜。


私はこの日の為に洋服をカードで買った。

ボーナス一括払い。
もう、限度額ギリギリだ。


胸元が大きく開いた
ベビーピンクのミニワンピース。

絶対、奈緒子には着ることが
出来ない色とデザインだ。


ちょっと結婚式の二次会みたいだけれど、今夜はこのくらいしてもいい気がする。



山下公園が一望出来る、老舗ホテルの洒落たバーのテーブル席。

私と藤木さんは、鼻と鼻を付き合わせるようにして飲んだ。


誰が見ても、2人はいい雰囲気なのに。

のっけから藤木さんは私より奈緒子さんの事を訊いてきた。


『坂本さん、
彼氏いるとかいってるの?』だって。

何それ?
好きだけど、素直になれない中学生が、探りをいれているみたいな質問。


2人が中学時代、同級生だったという話は奈緒子が言っていた。


いくら共通の話題になるからって、こんなシチュエーションで奈緒子の話なんかしないで欲しかった。