『金曜日の夜ならいいよ。
悪いけど、店決めといてくれる?
俺、こっち久しぶりだから』
これから、出先に向かうところだった藤木さんは、そう言って、礼香の誘いに二つ返事で応えてくれた。
『じゃあね!』と笑顔で言って、身体を翻し、慌ただしく去っていく彼の後ろ姿を見ながら、私はなぜか奈緒子さんに勝った気がしていた。
何も知らない奈緒子さんは、
『ああ、スッキリしたわあ。1キロは痩せたかも〜』と嬉しそうに、腹をさすりながら戻ってきた。
うわ。おばさんみたい。
男の前では気取ってるくせに。
そういえば、奈緒子さん。
いつだったか、『社長に話し掛けられちゃった!』って、忙しい藤木さんをわざわざ呼び止めてまで自慢していたっけ。
『ね、尚哉!私、坂本さん、お疲れ様って言われちゃった〜』だって。
はああ?
〜ンなこと、いちいち人に言うこと?
私にしてみれば、それが何か?って話なんだけど。
ただの年寄りの気まぐれでしょうが〜
藤木さんも藤木さん!
奈緒子に、あ、呼び捨てしちゃった、
奈緒子さんに、調子合わせちゃって。
『マジ?俺だって直に話したことなんてねえよ。すげえなあ』
なあんて、元同級生丸出しの会話しちゃってて。
一応、勤務時間中なんですけど?
私達、若手女子がそんな私語を交わしていたら、大変。
後で『ちょっといい?』とトイレに呼び出し、
『私達のすることは目立つんだから。
そこ、ちゃんとわきまえてね!』
とかなんとか、腕組みして言う癖に。

