(今頃になってなぜだろう…)


不思議に思ったけれど、ふと、ソースの臭いが原因だと思い付いた。

昨日、歌織との会話で恵也の名前を口にしたことも一因だろう。


「これを食べたら、
店を手伝いに行こう…」


奈緒子はスマートフォンを手に取ると、母にメールを打ちはじめた。


恵也の存在は、尚哉とは別に、15年経った今でもそんな形で奈緒子の前に突如として現れる。


その度に恵也のことを、どこか心の片隅で好きだと思う多情な自分に呆れる。


こんな時は、外出しなくては。


そうでもしないと、夢に出てきた恵也
ーーーあの茶色い瞳に再び飲み込まれてしまいそうだった。







16歳だった夏。

外はまだ明るい。


二階の北側にある八畳ほどの
恵也の部屋。



ーーあん…ねえ〜ちょっと、ちょっとぉ〜
タイム!
お願い…トイレ行かせてよ……



奈緒子は恵也の身体の下で甘ったれた声を出し、その腕を振りほどく。



ーー…なんだよ…トイレなんて我慢しろよ、俺…もう少しでイキそうなんだよ……


パイプベッドの上。

恵也は逃げようとする奈緒子の身体に
手を廻す。


ーーやだあ…だめ、漏れちゃう、
もう奈緒子、本当に限界なんだってばあ…


ギリギリまで我慢していた。



ーーマ○○、舐めてやるから拭くなよ。


ベッドから降りる奈緒子に、恵也はニヤリとしながら卑猥な事を言った。



ーーやだあ…馬鹿じゃない、変態!


奈緒子は頬を赤らめ、裸の恵也にクッションを投げつけた。