「それでね、チカったらさ…

3組のタケダタカシ君の誕生日にマフラー渡したいからって、指編み始めちゃってさあ。
夜の11時なのに。
寝なさいって怒っても
全然きかないの!」


カジュアルなイタリアンレストランで
歌織は、さもおかしそうに小学生の娘の話をする。


尚哉に逢えないから、と言っては悪いけれど、奈緒子は昨夜、歌織にメールをして今日、土曜日のランチに誘った。


『広島から来るから』


尚哉のその一言でふた月に1度、空白になってしまう週末。

そんな時はこうして歌織に逢った。



中学時代の親友・野島歌織との友情が復活したのは、5年ほど前の事だった。


ちょうど、奈緒子が今の会社に入った頃。

歌織は突然、奈緒子の携帯へ電話してきた。


ーー私ね、離婚したの。


電話口で歌織はいきなり言った。


ーーさっき、奈緒子の家に電話したの。
おばさんが出てね、私のこと覚えててくれたよ。
それで、奈緒子の携帯の番号、教えてもらったの。



婚家先から実家に戻った歌織が荷物を整理していたら、中学時代の卒業アルバムが出てきた。


それを眺めるうちに奈緒子のことが
懐かしくなり、電話をかけてみようと思いついたと言った。