あっと言う間に、選挙演説二週間前となった。
選挙の話はまだか。
そう思って過ごす、昼休み。
お昼を食べ終えて、机で本を読んでいると、放送のチャイムが鳴る。


『ええ、と、選挙にボックスに立候補してくれた人たち。至急会議室に集まってくれ。この放送を聞いていなくて来れなかった、というのは無しだからな』


聞こえたのは、魁王先輩の声で。胸が高なる。
周りはざわつき始めて、会議室に向かう生徒がちらほら見えた。
僕も行こうと立ち上がる。すると


「あ、八王子くん、行くの?」


話したこともない男子が話しかけてくる。
彼の名は、篠崎要(シノザキ カナメ)。
このクラスの中心的存在だ。


「え、嗚呼、うん」


「じゃあさ、一緒に行こうよ!俺も立候補したし」


ニカッと白い歯を見せて笑う篠崎くん。
僕は、戸惑いながらも「うん」と短い返事を返す。
すると、篠崎くんは、僕の手を取る。
驚いて、相手を見ると、またニカッと笑った。


「行こ。遅刻扱いされちゃうよ」


そのまま、篠崎くんは僕の手を引いて廊下を駆け抜ける。
篠崎くん、腕、痛い。