「むむっ、貴様、さては八王子冬樹だな!?」


そうだ、やっぱり!
この話し方をするのはこの人しかいない!


「お久しぶりです!柊先輩!」


本当に久しぶりだ。柊千草(ヒイラギ チグサ)先輩。柊先輩は、中学時代の生徒会メンバーの人で、何かと厳しい人だ。けれど、たまに優しかったり励ましの言葉を掛けてくれたりといいところも有るので、後輩からの人気は結構高い。
また、この話し方も特徴的で、古風てな人だというのも覚えている。……流石に私服が和服の時には驚いたけど。


「貴様、こんなところで何をしている。不法侵入者で警察に連絡を入れてやってもいいんだぞ」


「い、いえ、あの……、今日から僕、この家に住むことになったんです…!」


それを早口に言うと、「それを早く言わんか」と言って取り出していた携帯をしまった。ふう、危ない危ない。危うく警察行きだった……。
ていうか、その服で携帯所持って…、似合わなさすぎですよ、柊先輩。


「ふむ…、確かに人が一人来ると予定表に書いてある。貴様の部屋は一番端だ。そうだな…、向かいは魁王………隣は…篠崎…だな」



篠崎くんの時に、少し声色が低くなったのが気になったけれど、兎に角、自分の部屋がわかったのだ。しかも、魁王先輩の向かいだなんて……、嬉しいこと極まりない!
僕は満面の笑みで「ありがとうございます!」と言うと、柊先輩をもう一度見る。
先輩は、少し戸惑う素振りを見せてから、僕に近づきこう言った。


「……気をつけるのだぞ」


僕は不思議に思う。なぜ、気を付ける必要があるのか。
僕はまだ、この後に起こることをわかっていなかったんだ___。