詰まらないなあ。
HRを受けながら思う。先程まで魁王先輩と会っていた時のテンションとは大違いに、僕は外を眺め只詰まらなそうにボーッとしていた。
やはりそんなときでも考えるのは魁王先輩のことで。あの腕に抱かれたい。あの声で囁かれたい。あの身体に触れあいたい………。
これじゃあまるでストーカーだ。
自分を正気に戻すようにフルフルと首を振ると、とりあえず教室の黒板の方を見る。
前に立っているのは、このクラスのクラス委員。大学に行ってもクラス委員っているんだな、なんか意外。
でもやっぱり、クラス委員とかは、魁王先輩がいいなあ。どうせ魁王先輩はクラス委員だろうなあ。クラスを纏めて、仕事をきちんとこなして……、っておい!また魁王先輩の話題になっちゃっただろう!
此処まで僕の頭の中は魁王先輩に洗脳されていたなんて…。初めて知ったよ。
そんなことを考えているうち、キンコンカンコンとチャイムが鳴り、HRが終わる。
やったあ!魁王先輩に会いに行ける!
僕はガタリと立ち上がると、一目散に魁王先輩の元へ向かった。その後ろ、鋭い目付きで此方を見る篠崎くんにも気付かずに。
「魁王先輩!」
「あ、八王子」
くるりといった動作で僕の方を振り向く魁王先輩。やっぱり、かっこいい。しかし、魁王先輩は何処か急いでいる様子で廊下を早歩きしていた。
一体何だろう。
「もしかして急いでましたか?」
「え、嗚呼、いや、大丈夫だ。気にするな」
茶化すように笑われるとどうも問い詰められなくて、僕は「そうですか…」と短い返事を返した。
同時に、魁王先輩も「お前こそ、俺に用があったんだろう?」と小首を傾げた。
「あ、はい、あの…シェアハウスの件で………」
______…………
「分かりました!ありがとうございました!」
そんな僕の言葉に嬉しそうに笑みを見せ、「嗚呼、じゃあ」と去っていく魁王先輩もかっこよくて。
……そうかそうか。シェアハウスに持っていくものは、とりあえず必需品のお金と服、あとは__。
今夜、足りない物を買いにいかないといけないな。明日からその家に引っ越しだ!
るんるんな気分で廊下をスキップする。魁王先輩と同居!同居、同居!
これほど嬉しいことはない。僕は、少しも後ろを振り返らずに家に帰った。
楽しみな明日のために__。

