文化祭☆LOVE 【完】


「ほんとにごめんなさい」
 あたしがそう言うと、画用紙を椅子の上に移動させていた西野くんが、顔を上げた。
 そしてあたしを見て、ハッとしたような顔をした。
「島崎さん、ぼくの作品より、自分の制服が…」
「えっ?」
 あわてて自分の制服に目をやると、点々とシミができていた。
「ああっ」
 思わず声を上げたあたしに、西野くんは落ち着いた声で優しく言う。
「大丈夫。 水彩絵の具だから、今すぐ洗えば水洗いでも大体落ちるはずです」
「ほ…ほんとに?」
「はい。 きっと大丈夫ですよ。 …それ、セーターですよね? 貸してください。 洗ってきますから」
 西野くんの言葉に甘えて、あたしはセーターを脱ぎ、西野くんに預けた。
 セーターを手に歩いていく西野くんの背中は、いつもと違って、とても…頼もしかった。