≪ 春桜中学校 3-A教室内 ≫

ザワザワ・・・・・
ザワザワ・・・・・

 毎年のこと、教室内は騒がしい。
毎年だから分かってはいるが、今年はいつもよりうるさい気もする。
何故だろうか。


 時計の針は、8時15分を指している。

 そろそろ、先生が来る時間だ。
・・・・・が、来る気配がしない。

 17分くらいになった頃だろうか。
クラスメイトは皆席につき、先生を待っている。
 20分頃。
廊下から、誰かの足音が聞こえる。
走ってくる様な、足音。
ちょっと疑問に思った・・・・・その瞬間。

バァァンッ!!

と勢いよく扉が開いたかと思うと、

「おっはよーございまーす!!」

と、とても大きな声が聞こえてきた。
 その声の発信源を見てみると、
真っ赤なジャージを着ている、まあまあイケている男の先生が。
運動とか、得意そうな顔をしている。
 その服装とテンションの高さに、クラス中が凍り付いた気がする。

「はい、A組を今年担当する、
 さーいーとーう、あーつーしっと言います!!」

 自分の名前を紹介しながら、黒板に「斉藤 敦」と書いていく。
その字は遠目で見れば“綺麗”で、
近くで見れば“とても雑”な字であった。
 そんな斉藤先生が、次に発した言葉。

「えー、今日は、
 学級委員長を決めたいと思います!
 はい、やりたい人!」


 その言葉には、クラス皆反応せず。
しん・・・・・と静まり返った教室。
そりゃ、いきなり過ぎるし、ね。

 5分経っても、10分経っても、誰も立候補する気配無し。
ある女子は友達と話しはじめ、
ある男子はウトウトしはじめ。

先生は、笑顔だがだんだんと怒りはじめている様子。

そんな中。
一人の女子・・・・・安藤李亜が、スッと手を挙げた。

「おっ、安藤、やってくれるのか?」
「いえ、推薦ですー。
 私、深里春香ちゃんを、推薦しまーす!」
「・・・え、私ですか?」
「うん、そうだよ?
 他に誰がいるって言うの?」
安藤李亜は鼻で笑い、そう言った。

なんで私?
安藤さんとは、そんなに仲が良い訳でも無い。
一体、なんで私が推薦されなきゃ・・・・

「じゃあ皆、学級委員長は深里で良いかー?」
そう問いかければ、皆が言う言葉はただ一つ。

「「「良いでーす!!」」」
私一人を除いて、
クラスの皆がそう返事をした。

「よし、という訳で、
 深里、学級委員宜しくな!!」
「・・・・は、はい・・・・」

話の流れ的に、そう返事するしか無かった・・・・。

・・・皆の前に出て、話す事もままならない私が、
本当に学級委員長など務まるのだろうか。
そしてこの一年、このクラスでやって行けるのだろうか・・・?