月夜の翡翠と貴方【番外集】



しっかりと目を見て言うと、ルトは少し驚いたような顔をしたあと、明るく笑った。


「ならいーや」


嬉しそうな笑顔に、心臓がおかしく動き始める。


「俺といるのに、全然違うこと考えられてたら、どうしよーと思った」

「全然違うことって…なに考えるの」

今の私は、全てルトで埋め尽くされているといってもいいくらいなのに。

他に、何を考える余裕があるのだ。


「…他の男のこととか?」


じ、とルトがこちらを見る。

ジェイドは眉を寄せながら、意味がわからない、という顔をした。


「なんで他のひとの事考えるの」

「だよね。ジェイドは俺のだもんね」


まるで、『俺の事しか考えちゃ駄目だよ』とでも言いそうな口調。

かあ、と顔が熱くなる。

ルトから目をそらそうとすると、頬に手が添えられた。


目があった瞬間、唇を塞がれる。


あの夜から、何度重ねたかわからない唇。

だんだんと甘くなるそれは、時折息をさせてくれない。