月夜の翡翠と貴方【番外集】



「…よかったな。ジェイドのお陰で命拾い」

顔を真っ青にしたレンウを見ていると、なんだかこちらが申し訳なくなる。


「昨日も、ふたりで話してたんだろ。ジェイドの様子からして、お前がなんか言ったんだろうとは、思ってたけど」

ルトは剣を鞘に収めると、呆れたような目でレンウを見た。


「俺ひとりで買って来いって言うから、おかしいなとは思ったんだよ。レンウ、なにがそんなに気に入らない?」

…やはり、わかっていたのだ。

ルトは、なにもかも。


レンウは一瞬口ごもると、ちら、と私を見て、口を開いた。


「…僕には、わからない。あの女の、なにがいいんだい」


…それは、私にもわからない。

ルトはその言葉に、少し考える素振りを見せたあと、私を見た。


「…可愛いよ。とにかく」


…馬鹿な男だな、と思った。

拍子抜けしたのか、レンウも眉を寄せる。

「…なんだい、それ。そんな女、他にもいるだろう」

「他の女とは違うんだよ。お前もしばらく一緒にいればわかる」


レンウはいよいよ、理解することを諦めたようだった。