月夜の翡翠と貴方【番外集】



ルトは冷めた目でそれを一瞥すると、私を見た。

そして、一切の躊躇いなく、言ったのだ。

「殺そうか?」と。


「………え……?」


驚いて目を見開く私に、ルトは「ジェイドが決めて」と言う。

…レンウを、殺す?


レンウは、怯えた顔をして、こちらを見ていた。

どうか、殺さないで、と。

訴えを孕んだ顔に、冷や汗が落ちる。


…これが、ルト。

ミラゼが言っていた、『残酷な』ルト。

仲間さえも殺そうとする、その精神。

レンウはそれを知っているから、震えているのだ。


私は足が震えそうになるのを堪え、首を横に振った。


「……殺さないで。私はなんともないから」


少し頭がくらくらするのは、出血しているからだろう。

喉元を切られたのは少し心配だが、きっと大丈夫だ。


ルトは私を見て、ひとつため息をついた。


「…ジェイドは、優しいね。俺は骨の一本でも、折ってやりたい気分なんだけど」

安堵しているレンウを、ルトはちら、と見る。