月夜の翡翠と貴方【番外集】



では、図々しくも、考えて良いだろうか。


ルトの隣で、ずっとその深緑を見ている幸せを、夢見て良いだろうか。


「…邪魔するものは、許さない。絶対に」


レンウが顔を歪めて立ち上がったと同時に、私は後ろへ走り出した。


ここがどこなのか。

どう行けば、どこへ辿り着くのか。

わからないけれど、走った。


息が切れる。

レンウの脚力に叶うとは、思わない。

暗い路地を、たくさんの曲がり角と出会いながら、ひたすらに走った。


…ねえ、ルト。

もしも、大好きだと、伝えたら。


貴方は、笑ってくれるのだろうか。


私の大好きな、あの笑顔で。



「…っお遊びは終わりだよ」

ダン、と壁に手をつかれ、私は追い詰められた。


息を切らして余裕を失ったレンウが、私を鋭く睨む。

「はっ…君に、こんな勇気があるとはね」

驚いたよ、と、おどけるレンウに、私はナイフを突きつけた。


そして、ニヤ、と笑う。


「…縄の縛り方、甘かったんだけど。油断は禁物なんじゃない?」


私の言葉に、レンウは目を見開いて皮肉げに笑った。