月夜の翡翠と貴方【番外集】



何より、彼の瞳が。


私を強く、離さないでいるのだから。



「…お姫様だなんて、冗談じゃない」

ぱら、と縄が解ける。

私の声と、解けた縄を見て、レンウは目を見開いた。


「…あなたの言うとおり、私は奴隷よ」

ゆっくりと立ち上がり、右手に持ったナイフを握りしめる。


なんて、くだらないことを延々と考えていたのだろうか。

どうせ私は、離れられないのだ。

彼が私を手放すまで、離れられない。

役立たずだと罵られても。

彼の優しさに、甘えても。


私は、ルトの瞳に囚われた、醜い奴隷だ。


せめてこの想いを貫くことくらいは、してみせようか。


「…ルトの隣だけは、譲れないと言ったでしょう」


意志が揺らいでは、駄目なのだろう。