月夜の翡翠と貴方【番外集】



「何故…って、そんなの、決まってるだろう」


揺れる意識の中で、落ち着いた声と、無感情な顔を睨む。

私を見て、レンウは薄く笑った。


「…君を、連れ去るためだよ」


…ああ、やはり。


その言葉を耳に残しながら、私は意識を手放した。







腰の痛みに、目を開けた。


そして目に映ったのは、暗い空間。

…ああ、目の端に映るあれは、樽だろうか。

大きな木の箱のそばに足が見えて、私は目を上へ動かした。



「…おや、目が覚めてしまったんだね」


…不気味。

木箱に腰を下ろして、こちらを見下ろすレンウの顔は、不気味な笑みに満ちていた。


ルトといるようになってから、私も段々と夜目が利くようになった。

暗い視界に慣れ、辺りが見えてくる。