「何故…って、そんなの、決まってるだろう」
揺れる意識の中で、落ち着いた声と、無感情な顔を睨む。
私を見て、レンウは薄く笑った。
「…君を、連れ去るためだよ」
…ああ、やはり。
その言葉を耳に残しながら、私は意識を手放した。
*
腰の痛みに、目を開けた。
そして目に映ったのは、暗い空間。
…ああ、目の端に映るあれは、樽だろうか。
大きな木の箱のそばに足が見えて、私は目を上へ動かした。
「…おや、目が覚めてしまったんだね」
…不気味。
木箱に腰を下ろして、こちらを見下ろすレンウの顔は、不気味な笑みに満ちていた。
ルトといるようになってから、私も段々と夜目が利くようになった。
暗い視界に慣れ、辺りが見えてくる。



